バレないように【蘭マサ】



本当の思いにセンパイは気付いただろうか。
いや気付かないだろう。オレをいつも疑っていたセンパイは、自分のことをよく分かってない。自分こそ疑ってみるべきだ。
ニコニコと同級生と話しながらも、神童には自分が隣にいると口は黙っているのにこちらには伝わってくる。気にしすぎだろうとなにも思わない奴は笑うかもしれない。だが、オレにはそうみえるのだ。互いを必要としていて、神童には霧野が、霧野には神童が隣にいるのが必然なんだと付け入る隙はないと雰囲気が。
 
「今日、体育の時間にオレたちの方みてただろ?」
バタンとロッカーを閉めながら霧野は、近くのベンチに座っていた狩屋にきいた。
「あーー……バレちゃいました?霧野センパイがヘマするシーンみれないかなーと」
狩屋は明後日の方向をみながら霧野に答えた。明後日の方向を向いているとくつひもがしっかり結べないので困る。
「お前はいつもそ………はーー………」
ため息を吐き出しながら霧野がしゃがんで狩屋の足に触った。
「えっ、センパイ!?」
驚いてると、足先がギュッと痛くなる。
「いっ……」
「くつひもは!ちゃんと結べよ!特にお前は細かく動けるのが武器なんだから、お前こそくつひもでコケた〜なんてしょうもないミスをするかもしれないだろ」
霧野はきつく締め付けた靴をパチンと叩いた。
「そんなことなりませんよ……てかこれキツすぎて痛……」
「じゃあ、今度はオレのくつひももよろしくな!」
霧野は狩屋の隣に座り、首を傾げた。その時桃色の髪が肩からゆっくりと落ちていった。
 
いやいやいや、よろしくって。
さっきまで考えていたことなんだったか忘れるくらいだ。

「……あとで文句はなしですからね?」
いいだろうと霧野は頷いたが、その後かなりの無言の反論の視線を浴びた。
 
いい気味だとこっそり笑いながら、本当の思いも同じようにきつく縛ったままずっと外に出なければいいのになと狩屋は胸元をギュッと掴んだのだ。




20201128




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