彼の星空【玲名とヒロト】






彼が熱く星空について語っていたけれど、私は全く興味がなかった。宇宙のロマンを感じないの?とか言われて、星が綺麗だなくらいしか感じないと答えたら、ならよかったと言われた。何がよかったのか分からない。FFIが始まり彼は日本代表になった。女であるため代表になれなかったのが少し悔しかったのかもしれない。彼がしばらくここを離れる際に私は励ましの言葉も何も言わなかった。ただみんなと見送っただけ。
「じゃあ行って来るよ」
その言葉が私には僅かに寂しく聞こえた。

人が減って静かになった。といってもまだうるさい方だが、いつもより喧嘩の声が少ない。
「静かになったわね」
隣で一緒に料理する瞳子姉さんがボソッと言った。
「私にはむしろこれくらいがちょうどいいです」
「素直じゃないわね」
素直にちょうどいいと思っているのに何故素直じゃないと言われたか私には見当がつかない。
その後醤油を切らしたことに気付き、私は買いに行った。

店を出る頃にはすでに日は暮れていて周りは真っ暗で電灯だけが頼りだった。
(懐中電灯持ってくるべきだった)


ふと空を見上げた。
いつの日かヒロトが語っていた夏の大三角はどれだろうか。
キラキラと無数の点を結び合わせることは私には出来なかった。
ヒロトはなんだって出来て羨ましい。私にはないものばかり持っていて、それをひらかすことは絶対しない。
ヒロトといると醜い自分が現れて嫌だった。そんなふうにヒロトに言うと、君の魅力なんだから認めなよと笑った。
認められるはずがない。
だって…だってヒロトの前では可愛いと思われる自分でいたい。

そう思ってくると泣けてきた。
いつもそうだ。
いなくなってから気付くんだ。
大切なんだって。好きなんだって。
だからあんな風に意固地になっちゃうんだ。

携帯を取り出し電話をかける。今までかけようとしてかけずしまいだった電話番号へ。

「もしもし、珍しいね。君からかけてくるなんて、何かあったの?」
久しぶりに聞いた声に安心して、素直に謝った。
「ごめん。いってらっしゃいって言わなくて」
あちらに泣いてることがバレないようにゆっくりと話した。
「今星見て後悔した。星見るとヒロト思い出すんだよ、あんなに語られたからな」

私は歩きながら涙が渇くのを感じていた。心にあったとっかかりが溶けていい気分である。

「…」

ヒロトから返事がない。突発的にこんなこと言って引かれたのかもしれない。そう考えると、電話しなければよかったと後悔の念がふつふつと沸いてきた。

「それだけだ。ごめんな、いきなり電話して。じゃあ…」
電話を切ろうとすると待って!と遮られた。

「今の玲名めちゃくちゃ可愛い」

「はあ!?わけわかんない!切るぞ!」

恥ずかしくて反射的に電話を切ってしまった。
ヒロトのせいだヒロトがいきなりそんなことを言うから暑くなったじゃないか!

「畜生、星め」
見てもどれがどうだか説明されても分からない綺麗な星空に向かって言ってやった。










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