春眠暁【蘭マサ】



ガンと頭に強く何かが当たった。
「いってえ……」
狩屋はぶつかったものを手に取った。投げられた方向には綺麗なピンクに染まった二つ結びがやってしまったという顔して立っていた。
「蘭丸……おまえまた!」
「マサキ悪い!!ほんっと―――にごめん!!」
霧野は頭を下げて、狩屋の頭を触った。
「どこも打ってないか?痛くないか?」
心配そうに狩屋の頭を撫でる。ああウザったい。狩屋はその手を振り払った。
「だっから言ってるだろ!!オレの近くでボールを蹴るなって!蘭丸は天性のボール蹴り方向音痴なんだから!!」
「なんだよ―――お前だって昔はボールを蹴り合ったじゃないか。そいやマサキ、これからどこいくの?」
「は?おつかいだよ、おつかい。うちのかーちゃんに暇だったら買い忘れ買ってきてくれってさ。はー、なんであんなに口うるさいんだか」
狩屋がブツブツ言うと、霧野はクスッと笑いがこぼれた。
「なにがおかしい?」
「いやなんだか嬉しくてさ」
「え?なんで」
「分からん。でも無性に…」
その気持ちが分かる気がした。狩屋も分かる気がしたのだ。こんな会話を望んでいた。いつの日かってああどうしてだろう。
幼馴染の霧野蘭丸は、じゃあねとその場を去っていく。
狩屋もおつかいへと街の方へと歩いていく。見知った道を歩いて商店街へ。雷々軒から聞こえる中学生の楽しそうな声。ゲーセンには今日は寄らない。おつかいが先だ。
おつかい…なんだっけ。狩屋はふと足を止める。そこはいつの間に公園だった。公園の桜の木はちょうど満開で、狩屋は目を奪われてしまった。目の前を多くの花びらが落ちていく。だんだん気分が良くなって上を向きながらスキップしていると、道の段差に気づかずに体が一気にぐわんと前のめりになる。転ぶ!と思った瞬間に、後ろから強い力で腕を取られた。
「大丈夫か!?」
振り向くと霧野だった。霧野の焦った顔に不思議とホッとした。
「あ、ありがとございます……」
「ん、怪我なくてよかった」
狩屋がお礼をいうと、すぐに腕を離した。掴まれた腕が熱い。よく漫画で見かけるドキドキ展開のように腕が熱くなっていく。鏡で見れば顔まで真っ赤だろう。これくらいのことでどうしてだ。
「あ、あのセ…」
「ん?どうしたマサキ?」
「……なんでもない」
何を言おうとした?自分は今幼馴染をなんて、思い出せないおつかい、急に熱くなっていく体。
そして、桜のように体がどんどん散っていく目の前の人。
にこやかな笑顔でオレに手を伸ばしていってもその手の先は花びらのように散っていく。ピンクの花弁ものが足元に散らばっていく。
「セ、センパイ……」
狩屋はボロボロと涙をこぼしていく。その涙とピンクの花弁は混ざりあい二人の間にどんどん広がっていく。
この世界ならきっと幸せなのだ。自分に言い聞かせても、きっとこんな結末にさせたのは、
「センパイなんだ」。



20160413




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