未来に行ったものの【円風】



今の雷門とは少し違う風景。
「ここが十年後かー…」
俺は知らず知らずのうちに十年後の雷門に来ていた。
宇宙人や天使などありえない体験をしてきた俺は素直に受け止めた。

グラウンドにはサッカー部員であろう子たちが、真剣な目でボールを追っている。
とりあえずは座って見ているかと風丸は木の下の芝生に座った。

「監督ー!」
と走って駆け寄ってくる一人の男の子がいる。

監督と呼ばれたオレンジのバンダナの…おそらく円堂だろう、円堂は見ていたノートを閉じ、顔を上げた。

男の子の話を聞いた途端、円堂は真っ赤にして「すぐ戻る!」と男の子に伝え、校門の方に向かった。

風丸は気になってついて行くことにした。

(円堂が顔を真っ赤にするなんてそうそうあるもんじゃない)
何かある。そう風丸は思った。



校門には若い女の人がいた。
円堂はその人に少し怒りながらも頬が赤い。
女の人は微笑んで持っていたお弁当らしきものを渡した。
二人が恋人かーそれか夫婦か、そんな関係であろう。

二人の笑顔が風丸には痛かった。
薄々気付いていた気持ちが揺れ動いている。

「円堂…」
涙が出た。
「円堂…」
止まらない。


視界は歪んでいく。いつかはくるだろう未来を見るために俺はここに来たのだろうかと風丸は思った。

(いつかくる…自分の想いを閉じ込めなきゃいけないとき。
それを改めて思い知らせるためにー。)



そんな風に思っていたら目が覚めてたのであった。







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