嫉妬に涙はしょっぱい【蘭マサ】



※恋人同士設定です。




いきなり呼び出したかと思ったら、壁に追い込まれてオレの手首を掴んで降参のポーズで拘束される。
「な、な、ど」
うしたんですか。と訊く前に口を塞がれる。いつもやるような触れるだけの口づけでなく、唇全部を使ってオレを求めてくる。食べられるのかと後ずさりすると、手首を掴んでいる霧野の力が強くなる。
甘くてとろけそうだ。よくドラマや漫画できくフレーズがふと思い出す。そんなわけないだろうと内心馬鹿にしていた。
こういうことをいうのだろう。全身の力が抜けて、立つのが辛くなっていく。それも気持ち良くなっていく。狩屋も自分からキスを求める。甘いものは好きだ。
気持ちいい。嬉しい。霧野先輩に求められる自分がここにいるんだ。


「……こんなに愛しているのに嘘だとか面白い冗談だ」
突然の長い深いキスが終わると霧野がぼそりと呟いた。
「ん、はぁ……え?霧野センパイ?」
呼吸を整えつつ狩屋はそのまましゃがんでいく。掴まれていた手首はいつの間にか離されている。隣にさっきまでのことはなかったかのように平然としている霧野がいて少々、いや結構ムカついた。
「お前、オレと恋人じゃないっていったんだってな」
「な……ハア!?あたりまえじゃないですか!!!」
「まーそうだけどさ、それでムシャクシャしてつい」
なんだその理由!?
狩屋は目を丸くさせて、口がポカンと開けた。
霧野が自分の嘘に過敏なのは分かるが、それくらいは許してほしい。というかそうしないと霧野自身にも困るだろう。
「どんだけ我慢強くないんですか!それくらい嘘ついたっていいでしょう!?」
「いや、もしかしたらお前がフリーだと分かって狙ってくる女子がいたらと思うと……!」
「ハア!?」
つい大きな声を出してしまい、口を塞ぐ。人気のない体育館裏だとしても、人が近くにいる可能性はある。
「いるわけないでしょ!!むしろ霧野センパイの方が大人気でこっちが……!」
嫉妬してると言いかけそうになってふと気付く。
「もしかして、センパイ、いるわけないオレのファンに嫉妬したんですか」
狩屋が言うと霧野は口をへの字に曲げる。
何だこの人。可愛い。
ニヤニヤと狩屋がそうだったんですかーと照れている霧野の顔を見ようとすると、また唇を奪われる。
「だからどうした。悪いか」
霧野は赤くした顔を見たが、それ以上に自分の方が赤いだろう。
「それくらい好きだぞ、狩屋」
霧野は行くぞと立ち上がり、狩屋に手を差し出した。教室に戻るまでにこの赤くなった顔が戻るか不安になった。



蘭マサワンライ「嫉妬」
20150713




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