「おめーら、そんなに疲れてねーだろ」
南雲はベンチに座る二人を見つつ溜め息混じりに言った。
ベンチは二人用で南雲は座れない。
「何言ってるの!僕たちいろんな服見回ったんだから疲れるに決まってるでしょ!」
照美はプンプン怒りながら頬を膨らませた。
「それに付き合わされて荷物持たしたのは誰のせいだ」
南雲は持っている沢山の荷物を顔まで持ち上げた。
「いちいち細かいぞ。それくらい君なら大丈夫だろうが」
涼野はいつもの仏頂面で言った。
チッと舌打ちしてジュース買ってくるわと南雲はブツブツ言いつつ買いに行った。
「僕たちのも頼むね〜」
照美が言うと南雲はハイハイと渇いた返事をしながら手をあげた。
「ねぇ」
照美は隣りにいた涼野に話しかける。
「なんだ」
「君さ〜ちゃんと晴矢に「好き」って言ってるの?」
涼野は一気に顔を真っ赤にした。
「な…バカ!聞こえたらどうする!」
「さっき買いに行ったんだからいるわけないでしょ」
照美はやれやれという顔をする。
「きつく当たるのもほどほどにしなよ。恥ずかしいのは分かるけど、あまりにそうなら晴矢に呆れちゃうよ?」
「分かってるつもりだ」
涼野は苦虫噛むようにそっぽをむいた。
「ほらよ、お二人さん」
ベンチの後ろからヌッと手が出て二人の顔の前に温かいココアがあらわれた。
「ありがとう晴矢。じゃあそろそろ行こうか」
「俺休んでないんだけど」
そんなことは耳に入らないようなフりして照美は立ち上がり歩き始めた。涼野もそれに続く。
「ったく」と買ってきたコーラを飲みつつ晴矢も続いた。
すると涼野が駆け寄ってきて、南雲の荷物を持った。
「飲みながら持つの大変だろう。私が少し持つ」
涼野がいきなりそんなことを言ったため南雲は驚いて足を止めた。
「どうした?」
涼野は足を止めた南雲にきいた。
「いや、なんでもない…」
「いつもありがとう晴矢」
真っ赤にした顔を隠すように、照美の方に涼野は走っていった。
南雲はハッと気付いた。
「アフロディー!風介に何いったんだ!」
照美は笑いつつ、涼野の手を引いて一緒に走り出した。
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