ため息【怜渚】Fr!



渚君をつい甘やかしてしまうことに気付いた。そのことを真琴先輩に相談すると、「仕方ないよね」と返された。確かに仕方ないかもしれない。しかし、それでは本人のためにならないのだ。

先程からずっと喋ってばかりいる渚をほっておいて、怜はペンを滑らせる。構うから余計に渚の行為がエスカレートしていく。それに月曜日から中間テストであるため、渚に構っていられないのだ。心を鬼にして渚の話をシャットアウトした。
「れーちゃんーさっきからつめたいー」
「……」
怜が無視していると諦めたのかようやくノートと参考書を開いた。カリカリと書き始めたので、怜も安心して集中した。一教科分の勉強がひとまず終わり、渚の様子をみると真剣そうに取り組んでいる。カランと音がしてふと見ると、渚の麦茶がなくなっていた。怜は麦茶を取りに部屋を出た。キッチンに向かい、冷蔵庫を開けると先日親戚から頂いたプリンが残っていた。
「頑張っていることだし」
怜はプリンと麦茶をおぼんにのせて部屋へと戻る。
「渚君、一旦休憩に……」
怜が声をかけると渚はスースーと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「全く仕方ないですね」
やれやれと思っていると、渚の顔の横にあるノートが見えた。
「なんですかこれはーーーー!!」
ノートにはイワトビちゃんがたくさん描かれていた。それは1ページ分埋めるほど気持ち悪いぐらいいる。安心していた自分が馬鹿だった!とおぼんを持つ手が震えた。
怜の叫び声に「んん、怜ちゃんどうしたの?」と目をこすって渚が顔を上げた。
「どうしたのじゃありませんよ!先程まできちんと勉強していると思っていたら、ノートに落書き……」
「すごいでしょ!一面イワトビちゃん!ハルちゃんがみたら喜んでくれるよね!あ、そろそろハルちゃん誕生日だし、これプレゼントに……」
「しないでください!というかこんなことしている暇ないでしょう!?明後日にはテストなんですよ!ちゃんと勉強していると思って、甘いものを持ってきたのに!」
「あ、プリンだー!」
「ちょっ……」
渚がいきなり立ってしまったため、怜は驚いておぼんのバランスを崩してしまった。どうにかひっくり返すことはなく持ちこたえたが、麦茶はガタンとおぼんの中で倒れた。こぼれた麦茶は怜の服の方へと倒れて服は濡れてしまった。
まずおぼんを机に置いて、怜は「渚君……」と静かに呟いた。
「ごめん、怜ちゃん……」
渚は慌てて机にあったティッシュを数枚とって濡れた部分を拭く。倒れた麦茶にはほとんど中身がなく、拭いているティッシュはみるみるうちに水分を含んでいる。大部分は自分の服にかかったのだろうとため息をついた。泣きそうになっている渚にもう一度ため息をつく。
「ごめんね、怜ちゃん……」
「もう起きたことは仕方ありません。ですから、プリンを食べたらちゃんと勉強するんですよ?」
「うん!」
そういうとみるみるうちにへこんでいた渚の表情が明るくなった。こんな笑顔を毎回見せられるからつい甘やかしてしまう。怜はまたため息をつくと、「ため息をつきすぎると幸せが逃げちゃうってお姉ちゃんがいってたよ」と渚に注意された。
「全部渚君のせいです」
怜は渚の頭を撫でた。




20140824




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