苦手な暑さは道路に陽炎を映している。
髪の長い女の子みたいな容姿がみえる。
「知り合いかな」
吹雪はねえ!と声をかけたがその人は前を歩いていくだけだ。
その背中に懐かしいものを感じる。
「ああ、どうして」
涙が次から次へと落ちていく。
それでもまだ僕は思い出せなかった。
【そうだったっけ、覚えてないや】
多くの愛に囲まれて僕は一人じゃないことをいつまでも確認したい。
「君は他の人も大事でしょう?」
そうだね、僕は君以外も大事。
でも君以外は代わりはいないんだ。
「でも受け入れてあげる」
照美の優しさを拒否することはできない。
今日も鳴かせて。君の傍で。
【どうにかなってしまいそう】
独占欲というものとは無縁だと思っていた。
「君はいつまでもここにいてほしい」
君に関わる何もかもが恐ろしくなった。
どこかへいってしまうのは仕方ないと諦めていたのに、どうして鎖をかけてしまったんだ。
泣いている吹雪の顔を舐めた。
「ごめん、愛している」
【誰にも渡さなさい】
綺麗な君は今まで見たどんなものよりも輝いていて、
僕は手に触れただけで熱が高まって酒を飲んだように酔いしれてしまう。
「僕は好きだったんだよ」
僕以外に客のいない居酒屋でカシスオレンジが入ったグラスを揺らす。
戻ってはこない昨日に僕は涙も出なかった。
【僕は一生、恋をしない】
私は完全なる神であった。
しかし一つの出来事で自体は一変する。
私は本当に神になりたかったのか。
自分は一体何を望んでいた。
追求していくうちにポチャンと水がはねる音がする。
「私はどうしたい 」
問いかけはただ部屋に消えていく。
「私は全てを好きでいたい」
その声はよく心に響いた。
【ひねくれた告白】
20140707
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