安心できるよ【吹雪+風丸+基山】



サッカーアイランドでの試合では、行き帰りはフェリーとバスを使う。疲れ切った身体には大変だが仕方がない。この日も試合後、フェリーで少し寝そうになったのに本島に着いてしまった。うつらうつらしながらさっさとバスに乗った。数人が適当な席に座っていて既に寝ている人もいる。見るといつもなら空いている一番後ろの席が空いている。壁山が乗っていないのだ。バスの窓の外から「壁山くん!歩きながら寝ないでください!」とメガネ君が潰れかけている。どうやらフェリーで寝すぎて無理矢理起こされたようだ。
「ヒロト君、ここに座らない?」
一番座席からひょこっと顔を覗かせたのは、吹雪だ。吹雪の背だとちょうど前の椅子に隠れて全く気付かなかった。
「でも壁山くん座るんじゃ…」
「大丈夫だよ。あの様子じゃ後ろの席までたどり着かなそうにだし」
吹雪は窓の外を指さし、壁山君に潰されているメガネ君をみてそうかもしれないと思った。オレも眠いし別にいいかと言われた通り吹雪の隣に座った。
「ふあぁ…」
吹雪が欠伸をした。
「疲れているみたいだね」
ヒロトが言うとまあねと苦笑した。そんなヒロトも疲れて眠いから人のことは言えない。
「皆そんな感じだよ」
風丸が吹雪と同じように欠伸をしながらヒロトの隣に座った。これでヒロトは窓側に吹雪、反対側に風丸に挟まれている。両サイドに人がいてそこに座るというのはあまり経験したことない。新鮮な気持ちでいるとようやく最後の壁山がバスに乗り込み一番前に座り、バスが動き出した。急に遠のいていた眠気が襲ってヒロトは目を閉じた。

***
気がつくと両腕が暖かい。
ヒロトがゆっくり目を開けると、吹雪と風丸がヒロトの肩に寄りかかって寝ていた。
オレが寝た後にどちらも寝ちゃったみたいだ。スースーと規則正しい寝息が交互に聞こえてくる。安心しきった顔が視界にあるとここまで距離が縮んだんだと頬がゆるんだ。
少し前まで敵同士だった二人。グランと名乗っていた頃は、この二人がオレに寄りかかって寝るだなんて考えもしなかった。もしかしたら無意識に二人と距離をとっていたのかもしれない。自分のしでかしたことはトラウマになるくらいのものだ。聞くところによると、吹雪も風丸もあの時は精神的に大きなことがあったという。自分から触れることは出来ないが自分のせいで二人とも傷ついたことは確かだ。そのことが心の中でどこか引っかかっていたのかもしれない。
触れた部分から感じる暖かい体温がまだあったわだかまりを溶かしていく。安心できる、信頼できる仲間が出来てよかった。ヒロトはにっこりと笑って再び眠りに落ちていった。








去年の再利用。ふぶきやまる
20130430




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