覚えて終わりまで【照吹】



再会してからの付き合い始めて何度か目の3月の終わり。
例年より気温が高く、四月下旬並みと天気予報では言っていた。外は日光がてらてらと照らし、道の雪を溶かしている。街並みは少しずつ変わっていくように僕らが取り巻く環境も変わっていった。
「別れよう」
「うん」
まだ固い蕾の桜並木をゆっくりと二人で歩いた。僕たちは19歳になっていた。背はどうしても照美くんを越すことは出来なかったなと一人思った。喧嘩はしたことがなかった。異性で好きな人も出来なかったといえば嘘となるが、一番は照美くんだと夜になると寂しさが増していった。いつかこの日が来ると僕は望んでいた気がする。永遠に続いてほしいとも思っていた。そのあっけない別れは長い月日を踏みしめた僕らにはまたねと言いそうになる。
「次会ったらなんていう?」
「最後に抱きしめてもらってもいい?」
上目遣いで頼む姿が愛らしくて何度も断れない。彼の瞳と仕草は誰だって魅了する。
「いいよ」
同い年であるのに小さくて腕の中にすっぽりとはまる。初めて抱きしめた時、柔らか
な彼の身体は強く抱きしめたら壊れてしまいそうと思っていると「アフロディ君、女
の子じゃないんだからそんなに柔じゃないよ」と身体を震わせて笑っていた。

雪が降った日に君を初めて抱き締めたことを覚えているだろうか。

暖かい体温が僕の身体に溶けていくような心地。出会ってからかなりの年月が経ったのに、一緒にいた時間はとても短かった。この体温が僕に触れたことは多いものではない。触れる度に一生忘れないと思った。
吹雪は抱き締めている間、照美の鼓動を聞いている。君といるだけで早まる鼓動を楽しんでいるのだ。
二人といるだけで温かかった。寒いときも暖かいねと言い合った。
「もうお行き」
照美は吹雪の身体をゆっくりと離した。彼は満足そうな顔で見つめている。
「うん、バイバイ。」
春が近い。僕たちはまた前へと進んでいく。








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俺得で 白い道/aiko
消化不良
20130401




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