心の鍵を探そう【ロボットパロ蘭マサ】1



※マサキがロボットのパロディです。





寂しいという感情が概念的に分かってもどうもしっくりしない。これが寂しいんだ、嬉しいんだと思えばそれがそうなんだろう。勝手に決めて感情に名前をつけて、埋め込まれたものは実際体験しても本当に正しいか分からない。
「ゆっくりでいいから分かっていったらいいんじゃないかな」
彼はオレの頭を撫でながらいう。彼は人間だからか。オレはロボットだからか。
そんなことを考えながら今日も彼の隣で寝た。


人間とロボットの違いが曖昧になる時代だった。

彼に買われる前、オレは町はずれの古びた中古屋にいた。ここお手伝いロボットを専門に使われなくなったお手伝いロボットや不具合があるロボットを買い取り売っている。ロボットといってもかなり人間に近い形をしたもので、買い手に絶対服従以外は自分で考えることもできるし学習機能もある。唯一ないのが心くらいだが、一般的な概念は埋め込まれているため分かる事は分かる。今日もまたオレは体育座りをして買ってもらえる人が来るまで待つ。最初にいた他の子は皆買われていった。世の中はやはりずっと一緒に入る事が出来る奴がいいのだ。
「お前も早く持ち主が現れるといいな」
店の主人はそういって頭をかいた。オレに言われても困る。
あと3年でオレの電池は止まり事実上スクラップ行きとなる。裕福な家は今や2・3台持っているのが当たり前だ。周りの世話をするお手伝いロボットが基本的で、老夫婦にはもってこいのようだ。普通のロボットは大体数百年持つと言われているが、オレの命(つまり電池)は不良品だったため、寿命が短い。流通したとはいえまだまだロボットは家を買うくらい高い。同じロボットであれば長持ちする方を選ぶだろう。売れ残りのオレは店を転々としたあと、この中古屋に今はいる。あと三年。ここにずっといるのだろうかと汚れた窓の外眺めていた。カランカランと入口の扉が開いた合図だ。オレはそっと目を閉じた。商品はお客を選べない。選んでもらえるまでオレ達はジッと我慢をする。動物でもないから愛想良くしても無駄というもの。店の主人はぼそぼそと話している。お客はとても若々しい声でよく通る。大人ではないだろう。子どもが何をしに来たというのだ。二人の声はだんだん近づいてくる。
「この子は…?」
「ああ、この子はあと3年しか持たない不良品なんだ」
「不良品…」
「この子なら少しまけてやってもいい」
店の主人は鼻で笑った。お客が子どもだからいつもの頭が低い態度ではないなとオレも鼻で笑いそうになる。
「ふーん。いやこんないい性能ならまけてもらわなくて結構。こいつを買うよ」
お客は何もためらいもせずに決めたようだ。まいどありと店の主人はそっけなく返した。

ロボット購入の手続きを終えると、オレは目を開いた。
「お、目覚めた」
目の前にいたオレの購入者は、オレより少し高いくらいの背丈で、二つ結びをしていてどこにでもいそうな少年だ。
「はじめまして。オレは霧野蘭丸。趣味は機械いじりだから不具合があったらすぐに言ってくれ」
ニコニコと霧野はオレに手を伸ばした。オレはまじまじと顔を見つめ恐る恐る差し出された手に触れた。
「マサキ、一緒に大人になろうな」
霧野はオレの手を両手で包んだ。手の温もりがこの人とオレの違いがはっきりと示しているなあとしみじみ思った。

霧野に関する情報は購入する際に与えられたものだけだ。何故オレを購入したかは、家事の手伝いとしか与えられていないが、他にきっとあるはずだ。マサキは霧野の世話役として霧野の屋敷にきた。まずはじめの仕事はゴミ屋敷という汚名をなくすことだった。広い屋敷には歩く場所がなんとかあるにしろ、ごみがそこら辺に投げられ、虫やネズミやらいそうで気持ち悪い。霧野の他にここに住む者は居ない。霧野はこのゴミ屋敷に一人暮らしだった。この屋敷は霧野夫妻の遺産で、夫妻は昨年事故で他界している。それからずっとこの屋敷に引きこもっていたらしい。慰めてもらうためにオレを買ったのだろうか。掃除をしながら考える。考えても霧野のことはそれしか知らないから何も思い浮かばなかった。
1日掃除をし続けてなんとか綺麗になった。霧野も大変に喜んで褒めてくれた。オレはありがとうございますと律儀に返すと、頭を叩かれた。
「そういうのはなしにしよう。お前、オレと同じくらいの年齢だっていうじゃないか」
「はあ。しかし主人として…」
「同等に扱ってほしいし主従関係より友達みたいに接してくれ」
あんまり納得はしなかったが、霧野がいうならそうするまでだ。
「分かりました。霧野さん」
友達のようにか。友達という概念は分かっていても実際友達がいたわけじゃないから難しいなとマサキは夕飯の支度へと取りかかった。

夕飯後霧野はこんな話をした。
「ロボットは通常心を持たないと言われている」
コーヒーを片手にマサキに語りかける。
「しかしそれは本当なんだろうかとたまに疑ってしまうね。特に人型となるとなおさらだ。同じような姿であるのに自分の意思もちゃんとあるのにさ。マサキどう思う」
「ないと思います」
「それが常識だからね。そうとしか君は答えられないのかもしれない」
霧野はマサキの頭を撫でた。
「君にもきっと心があるさ。そのうち分かる」

霧野の元にきて1週間が経った。その日霧野の友人である神童拓人が訪ねてきた。神童は長年の友人で、お化け屋敷ではなくなったのをきいて訪ねてきたらしい。霧野は突然の訪問と久しぶりの知り合いに嬉しそうだった。


continue....




変な区切りですが続きます。

20130401

追記::事情あって打ちきりです。




prev next








×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -