水溜まりに溺れましょ【風宮】



外の雨が強く音が部屋に響きわたっている。雨の匂いがする先輩はタオルを肩に被せて、髪から落ちる水滴を染み込ませている。宮坂の向かいに座って勉強する姿はいつも以上に格好いい。水も滴るいい男とはこういう人をいうんだろう。
「風丸さんって髪綺麗ですよね」
「そうか?お前の方が綺麗じゃないか」
手を止め肘をついて風丸の顔を眺める。そこら辺の女の子よりずっと整った綺麗な顔をしている。早速問題を開いてノートにカリカリと動く手も素敵だ。あの手で僕を触ってほしい。なぞってくすぐられたい。それだけで遠くにいきそう。
宮坂はニヘッと口を開けた。
「風丸さんが綺麗でした」
「?何で過去形?」
「僕は綺麗じゃない風丸さんもいいと思います」
「例えば?」
風丸さんは手を止めてこちらをちらりとみた。宮坂は頬ずえしていたのをやめて、手を膝の上に置いた。改めては見つめられない。
「僕を馬鹿にする風丸さん…とかいつまでも待たせる風丸さんとか言葉だけの風丸さんとか」
「ひどい言われようだな」
フッと吹き出して風丸は宮坂に手を伸ばした。
宮坂は伸びてくる手にドキドキした。爪で引っ掻けさせて後悔させたいくらい。真剣な瞳が僕を見つめている。
あと数ミリのところで手は下がっていった。
宮坂が眉を下げると、そのしてやったりな顔がむかつく。
「期待だけさせる風丸さんも醜いです」
「でもいいんだろ?それでも」
まあそうですね!と適当に投げて昨日の宿題をカバンから取り出した。
「素直なんだかそうじゃないんだか」
風丸は再びノートに視線を戻す。ペンをくるりと回して得意気だこと。
「風丸さんには負けますよ」
頬を膨らまして顎を机につけた。
宮坂がじっと見ていても風丸は気にせずに問題を解いていった。
二人とも静かになれば雨の音がよくきこえる。雨がずっと降っていればいい。時が止まったようにこのまま。
雨は地面に吸われてしまう。ベランダにある水溜まりは吸われない。
「ずっと水に溺れていたいですね」
宮坂がいうと風丸は怪訝そうにこちらをみた。
「ほんとおかしなやつ」
ため息をひとつ吐いて頭を撫でてくれた。
気持ちいい風丸さんの感触に溺れて雨はまだ止まない。





20120220




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