またおいで【照風照】



※二期後半




手の温もりが生きていると思わせた。
「冷たいね」と彼は僕の手をそのまま暖めた。
「離せばいいのに」
「今は冷たいものに触れていたいんだ」
彼はどこか寂しそうな目をした。二人きりで湖の傍のベンチ。誰もここへ来ることはなかった。
「好きなんだ」
「知っているさ」
僕は彼の肩を寄せた。
彼は弱い。傷付き、消えることない恐怖に怯えている。彼はどうしようもない不器用なんだ。電線があると知りながら手の届きそうな宝を欲しがる。引っ掻き傷で目を覚ませば、そこに望んだ宝はないと思い知るのだ。彼の引っ掻き傷は痕を残していく。常に見えるところで自分の不甲斐なさを何度も悔やむ。彼は決して悪い子じゃなかった。人並みに辛くてこれが普通なのだ。なのに、彼は受け入れることが出来ない。
彼の熱が僕の手や肩、腕に溶ける。彼は僕に安心して身体を預けてくれている。
このまま二人で世界を上書きできたらいいなあ。

「照美」
「なんだい」
「好きだよ」
「うん」
「好きだよ」
「うん」

空は青かった。どこまでも遠くて手には届かない。
彼は涙を一つ二つと地面に落とした。


「すまない…ずっと傍にいてあげたかった」
「知ってる」
全て知っているさ。僕は彼の額にキスを付けた。次に彼は僕の額にキスを落とす。ばいばいさようならと言う代わりだ。
彼はいつのまにか明るい目をして空を見上げた。
それが僕には眩しかった。それが結果だ。



彼は翼を広げて飛んでいった。
また休みたくなったらおいで。
照美は静かに目を閉じた。

















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大好きな方へ。誕生日おめでとう。
愛しい期間があってそれはとても大切だったけど、照美は何より風丸の力になりたかった。キスしあう二人が互いの塗り薬できっと幸せでした。そこは皆様の想像力で(書けなかった)
20120129





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