ハッピーエンド【蘭マサ】





物語はハッピーエンドが常である。それは読者にもまた筆者にも落ち着くからだ。


理科の先生だったか美術の先生か忘れてしまった。そんなことをキラキラとした瞳で語りだしたのはどうしてかオレは知らない。
そもそもハッピーエンドとは、物語の主人公にとってかそれを読んだり見たりしている第三者によって解釈が違う。寿命により絶えた命を主人公はハッピーエンドと捉える。それを聞いたひねくれものは不合理だとへりくつをこねてバッドエンドだと嘆く。ようやく巡り会えた運命の人と結ばれずに一人涙にくれるが最後の切ない話が幼なじみと結ばれたかもしれないとハッピーエンドと言う少し異なる観点の人。人それぞれだが、大体は同じだ。そして悲しくなるより心暖まる方が大体よい。あくまで、一般的の話で13手前の俺にどれがよいかと大きく言えたもんじゃないけど。




いきなりこんなことを考え始めたのは、先輩が女子の夢を壊したからだ。
「少女漫画ってさあ、くっついておわりだよなあ」
部室でなんとなく漫画読んでいたら霧野が話しかけてきた。
「まあ、そうっすね。オレ読んでるのは結○師なんですけど」
「お前じゃなくマネジャーが少女漫画貸し合いっこしててさ、どんな話かと聞いたらつまるところくっついておしまいだった」
「先輩…もっと細かく言われたでしょう。多分くっつくまでの過程が好きなんじゃないですか。苦難乗り越えてここまできた!っていう。そこは少し少年漫画も一緒ですしね」
霧野は椅子に座っている狩屋の前に座り、頭を優しく撫でてきた。それでも漫画から目を離さずに狩屋は没頭した。ふりだ。期待しちゃいけない。平気な顔を懸命に保ち、心臓はうるさく鳴る。霧野はそのうち狩屋の髪を一束持って離したり自分の指に巻いたりして遊び始めた。

「先輩…集中できないんですけど」
「ん?ああ悪い。狩屋が俺にかまわないからつい」

なんだそれ。なに、真顔でそんなこと言っちゃってるのこの人。
耳が熱い。目が見れなくて背けて、漫画を見つめた。
「狩屋と俺はさ、なにか乗り越えたっけ?」
「あー俺たちのサッカーを取り戻した!とか」
「それで愛は高まったと思ってるのかお前」
鼻でフッと笑われてちょっと悔しい。
「じゃあ、先輩はどうなんですか?」
「俺か?んー…今からかな」
「は」
霧野は狩屋が持っていた漫画をひょいと取り上げて放り投げた。漫画は綺麗な弧を描いて壁にぶつかった。
「ちょっ先輩なにはす…」
「愛が高まることをするためだ」
意味がちょっと分からないですよ先輩。
しかし霧野の瞳は揺るがず真剣な色を帯びている。

「さて、何から始めようか」
霧野の桃色の髪が狩屋の唇に触れた。







ハッピーエンドは桃色



20121029




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