息【アフロディとヘラ】



ナルシストと彼をそう呼ぶ人もいるが、他人のことしか考えていないと私は思う。
雷門中に破れてからそれは特に顕著だ。
元々彼は人の心を読み取るのがうまい。私自身も不本意に読まれて何度もイライラさせられた。彼の言葉はまるでとげのある薔薇のようだ。綺麗な形をして、相手に触らせて傷付ける。全てがとげのある言葉で私を殺そうとする。彼にこんなことを言えば、こう返ってくるだろう。

「それは君の解釈でしかないよ」



たまに憂いた顔するアフロディをみる。ほんの一瞬気が抜ける。やっぱり彼も人間なのだと安心する。神ではない、ただの後輩。後輩に少し負けてる醜い自分だから、ちょっと安心するのか。

「善人みたいな生き方をして疲れないか?」

ヘラはベンチでドリンクを飲んでいるアフロディに訊いた。
アフロディは唐突の質問にも驚かずにドリンクを置いた。私たちにとってよくあることなのだ。

「みんなが好きだからね」

「善人」の部分を否定しない。自覚はあるのか。模範解答例のような返しをしつつ、自分は誰かのために何かをすることに犠牲してもいいという嫌な答え。

「息苦しくないのか」

どこで息継ぎをするんだ。誰も他人なんぞみていないし、皆自分のために生きている。アフロディの生き方は犠牲だけで、見返りがない。なにが楽しい。そして、何故そう問いかけた私の顔みてーーー優しそうに笑うのだ。

「そう思うなら、息をちょうだい?」

アフロディは無邪気に首をかしげてねだった。長い髪が静かに頬をかすめて落ちる。全てを見透かすようなアフロディの目が今のところ一番気に食わない部分だ。
そんなことお前に出来るのか?僕みたいな他人のために何かをするなんて、お前には出来ないだろう?自分しか見えてないのだから。
内心お前の思っていることくらい、私にだって分かる。だてに一年長く生きてない。

「いいだろう」

一瞬だけ驚いたアフロディは、ふふっと笑った。ヘラは左手で落ちた長い髪を耳にかけてあげた。










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ヘラのアフロディに対する考察は前半で言った通り、自身の解釈でしかなくて、自分の歪んだレンズで見ているなと照美は思っている
ヘラは左利きだと勝手に決めた

20120719




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