赤い林檎にみせられて【白雪パロ】2



※1の続きです





あの子と出会ったのはほんの一回だけ。

隣の国でパーティーがあり、私は王に言われて参加した。元々あまりそういったものには自らは参加しない。各々の姫や王子を見定め、常に結婚という政治的な部分が宙に浮かんでいる。初めて参加した時は凄まじかった。これが噂の…!と皆私をじろじろと観察する。そして子どもを使って私と仲良くしようとするのだ。にこにこと笑って私はかわし続けた。

その様子を見守っていた私のしつけ係はカンカンになって叱った。一人でもいいから話を続けなさい。たまには踊ってあげなさい。あなたは姫でどこかに嫁がなければならないのだから。嫁ぐといっても私は男だ。今は姫の格好をしていても伴侶となれば、いずれ分かってしまうのに。

パーティーは結局ただの気疲れしか残らないつまらないものだ。

一通り挨拶と数人とのダンスを終え、少し綺麗な空気を吸いにベランダに出た。深呼吸すると夜の冷たい空気が肺を通り抜けるのは心地よい。
「ちょっと疲れたな」
「君もかい?僕もだ」
誰もいないと思っていたので照美はびっくりして、声がする方を振り返った。みると私より背が低い男の子がドアに寄っ掛かっていた。
顔立ちが非常に綺麗でおそらくどこかの王子。格好いいというより可愛いといった感じだ。

王子か…照美は気を入れ直した。
「あら、奇遇ですね。ではお邪魔しないようにこれで…」
「待って」
王子は照美の腕を掴んだ。
「邪魔じゃない。それなら邪魔なのは僕の方だろ。君はまだ一呼吸しか休んでいない」
「私はそれくらいで十分です」
「知っているかい?こういうときは先客がいいといえばいいんだ」
「勝手ですね」
照美はクスクスと笑い始めた。王子は何で笑っているか分からず、戸惑っている。
面白い。直感的にそう思った。話をしてみると、貴族特有の鼻につく自慢話などをせず日常的な話や自分の失敗話をし照美を笑わせた。

話ごとにくるくる変わる王子の表情がとても可愛くて綺麗――――

「…僕の顔に何かついてる?」
照美はそっと王子の顔に触れていた。
ふわっと甘い香りがする。さらさらの肌にキラキラと輝く瞳、そして上目遣いが眠っていたものを呼び起こしていた。永眠させた僕を…。
数十秒じっと眺められて、王子は顔を赤く染めていく。白から薄い赤に広がっていくのがなんとも美しい。

「君、名前は?」
「吹雪…」
「覚えておこう」

照美はすっと遠くを見据え、もう一度深呼吸する。私は姫だ。姫でいなければならない。華やかで薄汚い色がはこびっているパーティー会場。照美はベランダをあとにした。

「びっくりしたー」
吹雪はへなへなと床にそのまま座った。手を胸に当てるとまだ心臓がばくばくいっている。
綺麗めの普通の姫さまだと思っていた。けれど顔に触れられた瞬間、雰囲気が全く違った。姫なんかじゃないあれは………。











「おい、晴矢遅い。夕飯の時間に間に合わなくなるぞ」
晴矢はゼイゼイしながら木の根っこの輪をくぐり抜ける。前を行く涼しげな顔をした小さな人、小人はふんと鼻息を鳴らした。

「誰がこんだけ持たしてるんだ風介!量を見ろよ!量を!」
晴矢は背中のリュックを指し示した。確かに風介より量が多い。
「貴様はそれっぽちも持てないのか…?全く情けない話だ。しかも人のせいにするとは笑止。今日はお前が負けたんだ。しっかりと約束は守るんだな」
「人間からの変な言葉を使いやがって…あーくそーあそこで決めていれば!」
「おや、負け惜しみかい?」
「ハア!?なんだと!」

額と額をくっつけて晴矢と風介が互いをにらみ合いっこした。そこへパンパンと手を叩いて、二人よりのっぽな髪の毛が爆発している細目の小人が割って入ってきた。

「はいはい、喧嘩しない。気分転換に歌でも歌いましょう」
「フン、歌とかなんだよチャンスウ」
そっぽを向いて晴矢が言うと、思いっきり顔を近づけてきた。明らかに怖い。

「歌のどこが悪いんですか?あなた、今日の夕飯抜きにしてあげますか?」

と目を開いて言われて冷や汗かいて、お、おうごめんと晴矢はすぐに謝った。









……遠くから声がする。懐かしい夢から聞き慣れない音にどんどん現実へと引き戻されていく。照美は森の中をさ迷い、日が暮れた頃に小さな一軒の家を見つけた。一休みさせてもらおうと、中に入ると誰もいなかった。家の中を探索しつつ、テーブルにあった少量の食べ物を口に運び、少しお腹が満たされたところで、ソファでちょっとだけ眠ることにした。ところがぐっすりと眠ってしまったらしい。うっすらと目を開けると辺りは真っ暗だった。
窓の外にぼんやりとオレンジの光が浮かんでいる。なんだろうか…。と、先ほどから聞こえている声が今度ははっきりと何を言っているかわかった。



「ハイホーハイホー!キムーチがスキー!」



照美はソファからずり落ちた。





…continue



20120325





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