言い聞かせ【一之瀬←リカ】



※失恋してます





ポストを覗くことが一日の始まりだ。
「今日もナシ・・・かー」
ふうとため息をこぼしてリカは食卓の前についた。
「なんや、今日もこーへんかったか?」
リカの母はあははと笑いながら、ご飯をリカの前に置く。こっちは真剣に落ち込んでいるのにとぶつぶつ言いながら、目玉焼きに醤油をかける。本気で笑っているのではなく、励まそうとしていることは分かっている。ダーリンとは文通で繋がっている。メールもできるし電話番号も知っている。だが、手紙がいいとあたしは言った。文通は相手のぬくもりが直に文字に浮かび上がるような気がする。だから、好きだ。
最初はアメリカに戻るといった際に泣きやまないあたしに、文通しないかと言われたことがきっかけで今でもその関係は続いている。あたしの手紙の毎回最後は「ダーリンだいすきやで!」で締めくくる。希望がないことは知っている。手紙を通して伝わるあの子への思い。
「そんな男、もう諦めたらええのに」
母がいきなり声音を変えた。ピタッと箸を止めた。
「おかん!!」
反射的に叫んでしまった。はっと我に返って顔をそっと上げると、母は味噌汁をズズっとすすっていた。一口飲み終えて口を開いた。
「アンタ、そない苦しそうにしてんのに、おまえのダーリンはなんも知らんやで。ほんにムカつく男や。今度会ったらしばいたるさかい!・・・ん、リカもう学校いく時間や」
時計を見るとそろそろ家を出なければ電車に間に合わない時間だった。急いでご飯を口に詰め込み、食器を台所に置いた。部屋に投げ出していたカバンを背負いこみ、いってきます!!と家を飛び出した。

なんとか電車に間に合った。ふうーっと入口の窓に寄りかかる。

(おかんごめんな、たぶんもうダーリンと会うことできへんねん)

先ほど言われた言葉がずきずきと胸にしみる。希望がないことはもう知っているんだ。
一之瀬からの手紙はきちんとした文字、整然としていて、あたしが心配しても変わりもなくそれはそれは温かい字で構成されていた。やがてFFIが進むにつれて返信は遅くなる。仕方のないことだけど、字はさらに綺麗になった。おかしい。イナズマジャパン対ユニコーン戦を見て、この直感は当たっていた。ダーリンのプレーが今までの中で荒いものだ。あたしは思わず、泣いてしまった。負けたからではない。気づいていたのに何もできなかった。そして気づかせないようにわざと綺麗な字で元気なふりされた。あたしじゃだめなんだ。あたしじゃ、アンタの支えにならへんの?今までの手紙をバアッとベッドに広げてそこに埋もれた。温かいのはアタシの涙とアンタのラインを引いた手紙の文字。次の日は目を真っ赤にして周囲を驚かせた。
そして決めた。きちんと告白した。そして振られた。
あの手紙のように温かい言葉で傷つかないようにと、無意味なのに。
ありがとなこれからもがんばれって言おうとした矢先で携帯電話の電源は切れた。充電器に指しながら電話していたが、どうやらいつの間にか抜けていた。携帯の赤いランプが消えていたことに気付かなかったのだ。
「なんだかあたしじゃんか」
リカは携帯を握りしめてまた泣いた。

「あ、ナニワランド・・・」
窓の外のビルとビルの間から観覧車が見えた。あの頃はただ自分の感情しか見えてなくて楽しかった。過去を振り返るとまた涙が・・・。
リカは制服の袖をグイっと引っ張り涙をごしごしと拭った。


「ただ臆病だっただけなんや」
あたしがダーリンの元に飛んで行かなかった。辛いと知りながら邪魔だと思って、ここで待っていたかっただけだ。

「まもなく○○駅に止まりますー」とアナウンスがかかる。
ドアが開くとリカは元気よくホームに降りたった。


「たまには思い出して手紙よこせよな!」
青空を眺めてリカはニカっと笑った。














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俺得BGM:赤いランプ/aiko
書き出したらまったく関係なくなって、こじつけた
関西弁適当ですごめんなさい


20120218




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