深夜【基緑】







深夜、こっそり抜け出してヒロトとコンビニ行くことが好きだった。空気がひんやりと身体にまとわり寂しくさせる。しかし、隣にはヒロトがいて寒いねって声をかけてくれる。うんそうだねって答えながら、本当は君がいるから寒くないと心の中で思う。

この日は風介と晴矢に頼まれたものを買いに行った。自分たちで行けばよいものを寒いから嫌だといわれた挙句、姉さんに抜け出しをチクると言われてしまっては仕方なかった。

「寒いって言ったくせになんでアイスなんだよ!」

「ふふ、風介の好物だからね。季節は関係ないんじゃない?」

「晴矢の肉まんと一緒にして溶かしてやろうかなー」

緑川は両手に持った肉まんとアイスの袋を一緒に片手に持つ。これだけの量なのに両手に持つのも面倒で仕方ない。すると、ヒロトがアイスの袋をさりげなく奪った。

「それじゃあ風介が可哀想じゃない。しかもこうすれば、手繋げる」

ヒロトは緑川の手を取ろうとする。が、その一歩手前で取ることをやめた。

「どうしたの?」

「今日手袋忘れちゃって、手が冷たいからリュウジの手冷たくしてしまう」
「・・・・いいよ。それでも」

緑川は着けていた手袋を外して、右手を差し出す。ヒロトがためらっていると、緑川はパッと手を握った。ひんやりとしたヒロトの手が逆に気持ちよくてさらに強く握る。

「冷たくないの?」

「なんか、逆に気持ちいい。ちょうどよい冷たさかな?」

「俺もリュウジの体温ちょうどいい。触り心地もね」

「ヒロトなんかオヤジくさいよ」

「リュウジ、オヤジはひどいよ」

触り心地という言葉を意識してはいけない。期待しちゃうから。リュウジはそう自分に言い聞かせる。ヒロトはオレを大切に扱ってくれる。好き同士になる前より格段に。嬉しいのだけれども物足りない。
愛されるってどこまでいっても満たされるものじゃないことを悩んでいて初めて分かった。もっと愛してほしい。ヒロトが抑えている部分がほしい。

車もなく、街灯は不安定に周りを明るくしている。深い足元もあまり良く見えない深夜の道。ヒロトの顔はうっすらに見てるか見えないか。こんなことを考えていられるのも、この暗さの間だけ。隣にヒロトがいることが確認できるのは繋いだ手の体温だけ。いつの間にか二人とも黙っていた。何も音がない世界は昔なら怖かった。何か音がなければ、怖くてたまらない。今は怖くない。隣にヒロトがいる。それだけで安心する。

「ねえ、リュウジ」
緑川がヒロトのほうを向くと、頬を触れられた。手は繋いでいるから、触れたのは。
「いいよ、奪っても。たまに抑えなくてもいいよ」

「・・・ここでそれいうの。反則だね」

星が降らない夜は何が降る?君からの愛が降ればいい。ありったけの愛を、オレに注いでほしい。寒いせいにして二人で温かくなろう。











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クリスマスネタにしようとしてあきらめたやつ


20111230






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