14歳の私【円冬】



10年後捏造もありますので苦手な方はBack!






毎年クリスマスはお父さんと家で過ごしている。決まりごとではないし、お父さんも年頃の娘を気遣って「別に友達と遊んできてもいいぞ?」という。すると冬花は怒った口調で、
「それじゃあ、お父さん一人じゃない。一人でクリスマス過ごすなんてこと私が許さないよ」
と道也を睨むのだ。本当の父でないと知った後も、いや知ったからこそ一人になんてさせたくない。二人だけの家族、もう失いたくないのだ。私が寂しくないよう家族になってくれたのに、お父さんを寂しくさせてしまったらそれこそ本末転倒だ。道也はふふっと微かに笑って冬花の頭を撫でた。照れ隠しのしぐさだって私には分かるよと言おうと思ったが、やめておいた。


クリスマスイブ、冬花は準備のため買い物に出かけた。一通り買うともう夕暮れだった。ちらほら電灯に明かりがともる。よく見ると周りはカップルが多い。これからどこか夜景を楽しみ、素敵なレストランでお食事なのかなと横目で眺めた。風が吹いて髪がなびく。
「寒いなー」
こんなに寒いと人恋しくなる。もし隣に守くんがいてくれたらと願う私がいる。カップルをみると余計に会いたい気持ちが募る。年末なので、サッカー部の練習もほとんどない。でもきっと、守くんは今日もサッカーをしているだろう。寒さなんて気にしないで、夢中でボールを追いかけている。そんな姿がいつからか、とても愛しいものにかわったのは。けれど、あることに気付いた。守くんが私に構ってくれるのは、幼友達としてなわけでこれ以上を望むならこの立場を捨てなければならない。それは出来ない。捨てて新たな立場が手に入らなかったら、私はどこに立てばいいのだろう。いつまでも守くんは私を幼い頃と同じ目で見ている。恋愛対象に入れない。今はそれがつらかった。
ぶるっと寒さで震えた。反射的に首をすくめる。
「あれ、フユッペじゃん!」
後ろを振り返ると守くんがいた。ついさっきまで会いたいと思っていたので、驚いて顔がにやけたがすぐに取り繕う。
「練習の帰り?」
「おう、フユッペは買い物か?荷物持つか?」
円堂は手を差し出したが、冬花は首を横に振った。
「ううん、そんな重くないし大丈夫」
「そっかー」
会話は途切れ、無言のまま二人は歩き出した。
日が沈むにつれどんどん寒さも増してくるように感じる。
「寒いなー」
「うん」
また会話が途切れる。円堂が困ったように頬かいた。冬花は拗ねているつもりはないけれど、今はなんだか話す気になれない。あっと円堂は閃いたようで荷物の持っていない方の冬花の手を取って、自分のポッケに突っ込んだ。
「こうすると暖かいだろ?」
暖かい以上に嬉しい感情が心を覆う。お礼を言おうと口を開きかけたとき、さきに円堂が言った。
「昔もこうやったよなー」
口は開いたまま固まり、ゆっくりと閉じた。
「懐かしいなーあの時は雪降って、フユッペが手袋忘れて・・・」
円堂が楽しそうに思い出してしゃべっているのを聞かずに、冬花はいきなり立ち止まった。
「どうした?」
「・・・私は14歳の久遠冬花だよ・・・!!」
泣きそうになるのを抑えて、円堂の顔を見て言った。円堂はきょとんとしている。あたりまえだ。だけど、言いたくて仕方なかった。昔の私じゃない、今の私を見て欲しいのに分かってくれない。フユッペはじゃあ、お父さん待っているからと早足でその場を去っていった。夕日はすでに沈んでいた。













10年後、今年もまたクリスマスの準備で街へ買い物に行った。カップルや家族ずれが多くて微笑ましく眺める。買い物リストに書いたものを一通り買ったが、
「買いすぎちゃったなー」
荷物の量を見ながら冬花はちょっとうなった。
「まあ、3人分ならこれくらい必要だろ!」
円堂が二カっと笑って、荷物を簡単に持った。

私たちが夫婦になって最初のクリスマス、もちろんお父さんも一緒に祝う。また気を遣って「夫婦なんだし二人で過ごしなさい。私は用がある」と道也は言っていたが、嘘だってすぐ分かる。
「昔もいったよね?一人で過ごさせないよ。特に今年は家族が3人になっての初めてのクリスマスだよ」
「私だっていい歳だし、空気を読んで・・・」
「空気より私の気持ちを汲み取ってほしいな。守さんにはいってあるから」
参ったなと道也は頭をかいた。

帰り道、気温は行くときより下がっていた。風吹くたび、寒くて身体が震えた。少し薄着をしすぎたようだ。
「冬花」
円堂がひじで自分のポッケを叩く。冬花は円堂の言いたいことが分かって、嬉しそうにポッケに自分の手を突っ込む。ふと、冬花は昔のことを思い出した。あの日もクリスマスだったな。
「ねえ、守さん覚えてる?昔もこうやってあなたのポッケに私の手を入れさせてくれたこと。あっ昔って言っても中学生の頃だよ。あの時、私が言ったこと覚えてる?14歳の私を見て!っていきなり言って、わけが分からないあなたを置いて帰っちゃったこと」
「あー覚えてる。俺、なにかしたっけどういうことだろうとずっと考えてたな。今になって考えると、昔の冬花の影ばかり見ていた俺に今の冬花を見てほしかったってことだろ?ごめんな、あの時分かってやれなくて」
円堂は片手ですまんと謝った。冬花はううんと首を横に振った。
「一番捕らわれていたのは私だった。なのに、守くんのせいだって!決め付けちゃって・・・でも分かってくれてありがとう」
冬花は円堂に寄り添った。円堂は照れくさそうに笑った。






14歳の私へ。大丈夫、あなたの気持ちは少し時間がかかるけれどきっと分かってくれるから。
今彼の隣にいることがその証明だよ。





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本当は15歳がよかったのだけれど、14の方があっていたから


20111224




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