季節外れ【南雲とアツヤ】





帰り道、ずっとオレをつけまとう奴がいる。

「なあ、そろそろ姿見せてくんねーか。ストーカーさんようっ!」

晴矢はバッと後ろを振り返った。奴はわっと悲鳴を上げてその場にしりもちをつく。晴矢は驚いた。変質者かなんかだと思っていたら、そこにいたのは小さな男の子だった。まだ3・4歳だろう。まだ10月はじめだというのにマフラーをしてセーターを着ている。
寒がりなんだろうか。「いたたた」と言っているその男の子に、晴矢は「ごめん、悪かった」と手を差し出した。しかし、男の子は晴矢の手を払い怒った。

「いきなり驚かせるな!・・・つ!」

男の子が左手を押さえたので見ると、少し血が滲んでいる。
「おま、血が出てるじゃん!今の拍子でか!見せろっ!」
「嫌だっ!お前なんかに・・・」
「いいから!」

晴矢は男の子の手を取った。男の子は振りほどこうとするが、全く歯がたたない。観念したのか握っていた。手のひらを開けた。かすり傷だが、血がじわっと出ている。晴矢は自分のカバンからペットボトルを取り出し、少しずつ流して傷口を洗う。男の子は滲みるのか顔が歪んだが、「男なら我慢しろ」と言われ黙って耐えた。
砂などが大体取れたので、もう一度カバンの中に手を入れる。

「お、あったあった」

晴矢はジャーンと効果音が出そうな感じで出したものを掲げた。それは、とても可愛いウサギのイラストが描かれた絆創膏だった。

「杏にもらったこれが役に立つとはなあ!感謝感謝!」

晴矢は嬉しそうに貼ろうとしたが、男の子は「嫌だー!」と足をじたばたさせた。晴矢は問答無用でバシッと貼った。すかさず男の子が絆創膏を取ろうとした。

「あっそれ実は傷が治るまでに取ると傷口から小さい虫がうじゃうじゃと沸いてきて全身を覆うぞ。」

晴矢は怖い顔で男の子を脅した。すると、男の子は顔から血の気が引いて、絆創膏を取るのをやめた。小さい子は何でも信じるなあとニヤニヤと見ていると、足のすねを思いっきり蹴られた。

「〜〜〜〜っ!」
小さいくせにキック力が強くかなり痛い。
「そんなもん貼るなよ!バカ!」
少し涙目になっている男の子を見て、晴矢は脅しすぎたと反省した。

「これしかなかったんだ、悪かったって!・・・ところでお前なんでオレの後をつけ回っていたんだ?」

「・・・ぼそ」

男の子は急に勢いをなくし、下を向いた。
「あ?なんだって?」
晴矢は男の子の口元に耳を近づけた。

「だから!あの必殺技見せてよ!」
男の子は大声で叫んだ。

「だー!鼓膜破れるだろ!あの必殺技って・・・・アトミックフレアのことか?」

「うん!オレ、アレ見たときスッゲーかっこいいって思ってさ!炎がゴオーッとなってお前のあのジャンプと重なって、スゲー威力でシュートして!さっきは遠くから見ていたからよく見えなくて・・・だからもう一回見たいんだ」

何かが吹っ切れたようで目がきらきらしている。小さい子にそんな目で見つめられると今度はこっちが背中が痒くなる。晴矢は立ち上がった。
「おっし!そこまで言うならこの晴矢様の必殺技、見せてやろうじゃねえか!お前、名前は?」

「吹雪アツヤ!」

吹雪・・・?なんか聞いたことあるな・・・あっイナズマジャパンにそんな名前の奴いたような・・・。

「晴矢!早く見せてよ!」

アツヤが晴矢の袖をつかんで引っ張る。

「お、おう!ここじゃせめーしアブねえから、河川敷行くぞ!」

「うん!」
返事したとたんにアツヤはいきなり走り出した。晴矢は待てよ!と急いで追いかけていった。先ほどまでの疑問はもう忘れていた。








続きます
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CP要素ないです
放置していた文であり、
続くっていったけど多分次で終わり

20111204




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