夢の中の神様【アフロディとグラン】



自らを神と名乗り全国大会で雷門に敗れた者。決勝を観戦していた時は、ガゼルは人間に負けた神など愚かと罵ったが、オレはガゼルのような侮辱あるいは哀れの感情ではなくむしろ同情していた。
あの頃は何故だかはっきりとは分からなかったが、今はなんとなく分かってきた。
円堂守はそれほどまでに大きな影響を与える危険物だ。危険物なのに近付いてもっと知りたくなってしまう。彼は神を変えた。神を超えたというより神ではない別の次元の話な気がする。考えているうちに、寝られなくなって2・3時間しか睡眠出来ない。そんな時に見る夢がある。会話したこともないアフロディが出てくるのだ。オレが作り出した人物だろうと思っている。何故なら、毎回アフロディはオレが悩んでいることを当ててくる。

今日もまた夢を見る。



プラレタリウムのような星に囲まれた空間にオレはただ突っ立っていた。動くことは許されない。オレの意思で動くことは出来ない。グランの横をサッカーボールが弾んでくる。追いかけるように、今度は守がグランを抜く。守はボールを足で止め、振り返って何も言わず手をさし伸ばす。初めて会ったあの笑顔で笑いかけてくる。グランは手を伸ばそうとするが動かなかった。

「そうだ、オレは君の手を取れないんだった」

――――――敵だから


突然耳元で声がかかる。

「いいのかい?きみはそれで。満足かい、自分の気持ちを無視してただ父さんのためというまるでヨイコチャンみたいな自分に満足?」

グランの目の前にバサッと羽の音を鳴らして現れた白いユニフォーム、

「こんばんは、アフロディ」

こういうとアフロディはいつも黙ってにこりと微笑むだけでそうだよとは言ってくれない。オレが作り出したからかもしれない。グランは俯きしばらくの間沈黙が続く。小さな星の明かりでは宇宙のすべてを照らすことは出来ない。この空間はよりいっそう暗さが強調される。オレが動けないのは暗いからかもしれないと思い始めてきた。

「こんばんは、はじめましてグラン」

えっとグランが顔を上げると白い光がまぶしくて思わず目を瞑る。そっと目をゆっくり開けるとアフロディが宙に浮いている。

「驚いた?眩しいでしょ、話をするには暗すぎたから悪いけれど勝手に明るくさせてもらったよ。これは僕の力でもあるけれど、君の中の光も使わせてもらっている。こんなに君の中に光があるとは実は僕も思っていなくて、僕自身もちょっと眩しいよ」

初めて言葉を返されてこれは夢かと思った。いや、夢であるけれどオレの作り出した神様ではない。今までみてきたアフロディより格段に・・・綺麗だ。

「さて君は毎回毎回僕を呼び出そうと失敗して偽の僕を作り出しているようだけど、もうやめてくれないかな。偽の僕なんていうか美しくないしさ。というかなんでこんなことしているのかな」

アフロディはヤレヤレとため息をつく。この状況にだんだん冷静になってきて随分理不尽で失礼なことを言われていることに気付いた。

「・・・オレの夢であるわけだし、むしろ君が勝手に入ってくる方が失礼じゃないかな。あと、光がこんなにあって悪かったね。オレもそう言われて正直驚いているところだよ。呼び出していると分かっているなら理由知っているんだろ」

あっはははと声に出して笑い出したアフロディにびくりと身体が反応する。何かへんなことを言っただろうか。

「ふふっ神だと崇めることは構わないよ、ま、今は自分から名乗ってはいないけれどね」

墓穴を掘った。顔が赤くなるのを抑えられず、下を向いた。崇めているつもりではなかったけれど、夢に何度も出てきちゃそういうことになる。と、照美がグランのあごを持ち上げて自分の方に向かせる。赤くなったグランの顔がアフロディをそそった。グランの頬に触れようとすると、パシッと手を叩かれる。グランはアフロディを睨みつけた。アフロディは目を大きく開けたのち、最初に見せた微笑みに変わった。

「なんだ、分かっているじゃない。拒否する仕方。難しく考えないで。ここみたいな宇宙の定理みたいな決まりごとはない。ひとつ間違えるだけで」

ゴゴゴ・・・と音を立って周りの景色は変わる。雷門中のグランドのようだ。守が楽しそうにサッカーをしている。
「世界は壊れ変わる。変化はおそれちゃいけない。」

グランがそっと足を動かす―――――――動いた

グランは走り出した。守のいる方へ。守も気づいて手を伸ばした。グランも手を大きく伸ばした。あと少しっ!

「あっ!」






・・・・夢から覚めた。そうこれは夢だった。喜んではいけなかった。その事実に泣くしかない。涙はでないけれど。


トントンとドアを誰かが叩いた。
「グラン、カオスが雷門と帝国学園で試合やっているそうよ。」

ドアを開けずにウルビダが鋭い口調で言う。オレのことが気に食わないことをもっと隠せよと思うが、別にいい。

「分かった」

これが現実。分かっているから涙は出ないんだ。

「夢なんてみるもんじゃないな」

グランは苦笑いする自分が鏡に映り目を背けた。







夢の中の神様





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まとまらん。夢オチばかり。
照美とグランの組み合わせ好きです。
次神様と会うときは現実だよ。
20111105




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