進路希望 1【ヒロ玲】※学パロ



席が近かったこともあったからつい聞こえてしまった。

「あーオレは高校行かないんだ」
ええっと聞いた子が驚いている。
「行かないで何すんの?就職?」
「就職…というより家の手伝いかな。今姉さん一人で家を支えてて、その負担をいくらか減らしたいんだ」
へーえらーい、俺より勉強めちゃくちゃ出来んのに勿体ないなーと、その子は今度は自分の進路について語り出した。玲名はそこから話を聞くことをやめた。


正直ふざけんなとすぐに殴りたかった。ヒロトはいつもそうだ。自分より相手だ。相手のためなら自分のことはどうだっていいのだ。私はそういうの気に食わないし反対だ。
その進路希望は絶対瞳子姉さんは反対するに決まってるし、結局は高校に行くだろう。

玲名はヒロトが先ほどの友人を励ましてるのをぼんやりと眺めた。






夜、自分の部屋で宿題が終わり、あとやることはないなとファイルを確認した。一つ残っていた。大きな空欄の目立つ紙が。
「明日までか…」
玲名は玲名で自分の進路希望調査に悩んでいた。第二と第三希望校は決まった。しかし第一希望だけ決まらないというか…

「ヒロトと一緒の高校がいいんだけど…」今日の発言からヒロトはその他のところに丸しただろう。

伝えられない気持ちがあるから、チャンスは増やしておきたいし、一緒の時間だって欲しい。同じ高校でなければ、今よりグッとチャンスは減る。今伝えれば問題ないのだが、なかなか自分のプライドや恥ずかしさで思うようにはいかない。


「すごく自分ずるい」

相手に任せて進路決められないとかどんな恋する乙女。実際そうだが私らしくない。

悩んだ末に、園から一番近い共学の学校の名を書いた。
これはあくまで希望だ。大丈夫、ヒロトは渋々高校行くことなる。そしたらきっとこの高校だ。

つくづく計算高くなる自分に嫌気が指してきたのでさっさとベットに横になった。







数日後、学校から瞳子姉さんに電話がきた。ヒロトの進路について話があるから学校にきてほしいとのことだった。

当日、瞳子姉さんは美人で有名なため、ヒロトにもそのことが分かった。またあの友人にからかわれていたが、ヒロトは軽く受け流していた。


その日、うまい具合にヒロトと二人きりで帰ることになった。いつもだとおひさま園グループで帰ることが多いのだが、今日は部活やら補習やらで皆帰宅がバラバラになったらしい。

「久しぶりだね、玲名と二人きりで帰るの」

「ああそうだな」

「もうその無愛想がデフォルメ化してるのどうにかならない?」
ヒロトは溜め息をついた。
自分だってどうにかしたいんだってば!と言い返したいがそんなこと言えるはずなく、玲名は素っ気なく返す。

「これが私だ。慣れろ」

「はいはい、もう慣れました」
とヒロトは笑った。

しばらく沈黙が続いたあと玲名が口を開いた。

「瞳子姉さん今日お前の進路のことで学校に来たんだってな。なんて書いたんだ」
下心が見えないように気になっていたことを聞く。

「姉さんの手伝い」

「そりゃあ、呼び出されるな。帰ったら瞳子姉さんに怒られるな」

フッと玲名が笑うとヒロトは苦笑いした。

「それは困ったなー」

玲名はあまり困っていなさそうなヒロトの顔を見て心がざわついた。


(…何かある)




予感は当たった。結果、ヒロトは怒られずに済んだ。
家に帰ると早速瞳子姉さんが自室にヒロトを呼び出した。
部屋からでると、ヒロトは玲名に向かってブイサインをした。

「怒られなかった」

「それは…どういうことだ」
まさかの展開に頭が真っ白になりそうだ。

「教えない」

ニヤリと笑ってヒロトはるんるん気分でその場を去っていった。

玲名はただその場に立ちすくんだ。












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続くか


20110812




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