えだまめ【カオスブレイク】




「君たちとの出会いからすると今一緒にテレビをみているなんて信じられないだろうね」

最初の出会いは、敵として試合をした。それぞれのお互いの望みを果たすため、名前も素性もよく知らない僕らは戦った。南雲と涼野は僕のことをFFで知っていたようだが、彼らが僕を神といった言葉は少し笑えた。果たしてあの頃の僕は神であったのか。全知全能だと誇りたく思っていた。しかし、神は全知全能だけでよいのか。自分のことしか考えていないのは神と言えるのか。神とは何か。答えは出なかったが、誰かが困っていると助けたくなる衝動は以前より湧き出てきた。

二回目の出会いは、互いに魅かれて出会ったのかもしれない。

「そうだな。しかし君からスカウトの話を聞いた時は驚きもあったが、胸の奥底からぞくぞくした。こうなるべき道は最初から敷かれていたのかもしれないと思ったよ。なにかの導きによってね」

涼野は枝豆を器用に箸でつかみ口に運んだ。試合を観戦しながらよくもそんな難しいことをできるものだ。南雲曰く涼野のくだらない特技の一つらしい。照美にとってはくだらなくなく、すごいことだと言ったら涼野はそっぽを向いてありがとうとこぼした。

「ったくなんの導きだよ風介。あ、ヒロトのやつゴールしやがった」
テレビから歓声が一斉に聞こえてくる。南雲はチッと舌打ちをした。それをみて涼野はため息をこぼすのだ。二人とも日本を応援しているくせに、基山ヒロトが活躍すると悔しそうな顔をする。南雲はいらだった様子で、涼野は呆れた様子でその真逆な反応が照美は面白く観察している。一緒に感情を分かち合えばいいし、本音も言えばいいのにそれが苦手なんだなと照美は思っていた。

基山ヒロトは二人にとって宇宙人とか関係なしに勝ちたい相手のようだ。日本代表に基山ヒロトがいると分かると、南雲は今までより練習に力を入れた。照美がそんなに彼を倒したいかいと訊くと、
「ヒロトは俺にとっては絶対に倒したい相手だ」
とサッカーボールを蹴り上げた。

「導きだがなんだか知らねーが、またいろんな強い奴と戦えると分かってワクワクしたぜ。しかも、神と言われたアフロディとともにならより強くなれるとチャンスはきたなってな」
「チャンスウだけに?」
「バ、バーカちげーよ!!」
涼野が突っ込むと、南雲は顔を真っ赤にして否定した。
「神であるか・・・僕は今も神だと思っているかい?」

照美が机に肘をついて枝豆を眺める。反対側に座っている南雲と涼野はテレビから視線を逸らさない。
鮮やかな緑にテレビの歓声が重なり、もうそろそろ夏が終わることを感じた。イナズマジャパンは優勝した。大歓声に包まれて、イナズマジャパンの選手の姿が映る。みんな信じられないといった表情をして、円堂の雄叫びでビリビリと感染し、互いに手を取り喜びを分かち合った。僕もこんな風になりたかった。このチームで最高の栄誉を勝ち取り、今までの努力が報われたという体験がしたかった。そして、一番はこの目の前にいる二人が喜ぶ顔が見たかった、だなんて・・・

「神だかは分からんがお前はすごいと思うよ」

遅れて、南雲が答えた。

「なんたってよくも知らないオレらをスカウトするとか新しく合体技を考えたり、部外者であるオレらが馴染めるように歓迎会や練習ない日は韓国を案内してくれたりしてさ、他人にそこまで出来ねーよ。しかも自分の技も磨くとか、神以上にすごいじゃん」

南雲がよっこらせと立ち上がった。つられるように涼野も立ち上がる。

「神とかそんなもん関係なしにオレはアフロディの心意気みたいなやつ?に魅かれたんだよ」

「晴矢。それをいうなら生き様だろう。僕も同じだ。アフロディのおかげでここにいられるし、自分自身も成長できたと思っている」

その言葉で神という言葉で縛っていた自分に気付かされた。枝豆から視線を立ち上がった二人に移した。

「んじゃそろそろ、行くか」
「ああそうだな、あいつらに負けてられない」

「行くってまさか・・・」

大会は終わってしまった。このチームにいる意味はない。虚無感が一気に全身をのぼっていった。こんな気持ちは初めてだ。二人とまだサッカーをしていたい。僕だからといったこの二人と・・・!

「待って・・・!!」

照美は行こうとする二人の手を取った。

「どうしたアフロディ?練習、お前もくるだろ?あんなもん見せられちゃー、今すぐにでも強くなりたいよな!」
南雲がいつもの自信満々な笑顔で言った。
「僕たちは必ず勝てる時が来る。あいつらみたく今度はうれし泣きが出来るはず」
涼野は照美の手を強く握った。

照美の表情は一気に明るくなり、「ああ」と笑った。







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マツさま
リクエストありがとうございました!
カオブレの絆は深いって信じてる

20120229




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