会いたくない【基緑】



※緑川とヒロトの視線をいったりきたりするのでご注意
少し緑川がヒロト気持ち悪がってます。











「会いたくない、から」





ドア越しに聞こえる声は泣いてる声。


「そう」
それしか言えず、ヒロトは思考の淵へと落ちていった。

嫌われるんじゃないかという
不安はいつもあった
セカンドランクとマスターランクの違いに緑川は一番敏感だった
僕は嫌われて当然だ
そう思うと少し心が昔に戻る
僕の最初の記憶―
赤い空がどんどん黒くなる公園にブランコに揺られていた傷だらけな僕
何があったかは忘れてしまったけれど
とにかく心も身体もずっとごめんなさいと繰り返していた

(ああ、またあの記憶が蘇っちゃった…)


その場を離れ、夜の外へと彼は出ていった。


頭の中がグチャグチャする。冗談だよって笑ってくれたらよかった。そしたらふざけんなって怒れたのに。
あの目は紛れもなく本当のことを言った目だった。その目から俺は逃げた。怖かった。
友達としてならヒロトは一番なくらい好きだった。その好きじゃないのは、分かる。だから逃げた。

自分の部屋に逃げた後、ヒロトは優しくドア越しに顔見せてと言ってきた。
正直気持ち悪かった。なんであの後にそんなこと言えるか不思議だった。




(俺は…ヒロト…)
泣きながらもその答えを探してる。



トントンとノックする音が聞こえた。
若干ビクリとした緑川だったが、泣き声を押さえてはいと答えた。


「鬼道だが、ヒロトいるか?消灯の時間なのに部屋にいないだ」
ヒロトという名前に少し動揺した。
「いないよ」

「となると、あとは外に出ていったな。お前も一緒に探してくれないか?」

消灯時間が過ぎても部屋に居なかったら、明日の練習には参加させないという規則がある。鬼道はそのことを気にしてるのだろう。


「…分かった、着替えたら行くよ」

緑川は手で涙を拭いた




気がつくと公園にいた。
ブランコに乗りながら星空を見上げる。
ただただ辛く悲しい時いつも星ばかり見ている。
「基山ヒロト」になってから
「グラン」になってから

何のために生きているかと訊かれたら
父さんのためとしか答えない。

今はそうじゃない。
何のためか…分からない。
けれど死にたくはない、生きていたいんだ。

「みどりかわぁ…」
涙が溢れたので顔を下向きにポタポタと地面に落とす。

君がいるから死にたくない。
もっと愛したいよ。抱き締めたいよ。気がつくと公園にいた。
ブランコに乗りながら星空を見上げる。
ただただ辛く悲しい時いつも星ばかり見ている。
「基山ヒロト」になってから

そんな感情がいけないの?
好きで好きでたまらない。

(生きたいって気持ちは君からもらったんだ。だから、)

「会いたくないなんて、」

辛い。




寒い中探したからか、大分頭が冷えてきた。

(ヒロト寒くないかな)

そういや、風呂上がりなはず。風邪引くかもしれない。
確かにキスされたのは嫌だったけど、言い過ぎたなと思う。ヒロトの傷ついた顔がずっと頭を離れない。

「あ…」
公園のブランコに乗っているヒロトを見つけた。
声をかけようとしたが、ヒロトが泣いていた。
初めて見た。彼の泣いているところを。
今までずっと自分が支えられる側だったと気付かされた気がした。俺が落ち込んでいると絶対励ましてくれた。だけど、ヒロトは…?
たまらず走ってヒロトに緑川は駆け寄った。抱き締めた。
「ごめん、ヒロトごめん」
(冷たいー…)緑川はさらにギュッと抱き締めて緑川は泣いた。
「え、緑川…?」

「会いたくないなんて嘘だから!傷つけてごめん!」

暖かいものが一気に流れてきた。
ヒロトは優しく緑川の頭を撫でた。

「謝らないで。僕の方こそごめんね。もう二度としないから」
ヒロトのその言葉にホッとした。
と同時になにか寂しいものが押し寄せてきた。

バッとヒロトから離れた。

「…いきなり抱き付いてごめん…」
顔赤くなりながら緑川は言った。

ボソリとヒロトは答えて、
「これでプラスマイナスゼロだね」と言った。


寒い中心は温まっていく。


冷たい過去は君が暖かい今で覆ってくれる。
だから大好き。





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