言いたかったこと【綱塔】



海に向かう車の中、リカは気持ち良さそうに寝ている。
さっきまでずっと喋っていたから疲れたのだろう。
「少し寂しかったよ、綱海たちとサッカーもう出来ないんだなーと思うと」
横にいた塔子が言った。

日本代表の練習や試合を見る度にそう思ってた。
イナズマキャラバンで過した皆が同じサッカーボールを追いかけてる。
あたしは同じサッカーボールを追いかけられない。
別に差別とは思わない。それが当たり前なのだ。
当たり前だけど、やっぱり悲しい。

「もう出来ないとかそんなはずないだろ?いつでも一緒に出来るじゃん」
綱海はわははと笑っている。
意味分かってないよ、綱海。
はあーとため息を塔子はついた。
「そう、落ち込むなって!俺だってお前とサッカー全然出来なくて寂しいさ。だけどな、寂しくなるくらい楽しかったってことだろ。楽しい思い出で落ち込むなんて、贅沢だぜ。そんでも贅沢したいんなら、俺が海に連れってやる。海はいいぜ、なにもか馬鹿らしくなるんだ」
そのまま綱海は海のよさを語り始めた。

綱海は凄く、いい。ついじっとその顔を見続けてしまう。
そう考えているといつの間にか寂しさはなくなっていった。



合宿所について、綱海は運転手さんにお礼を言った。
少し名残惜しいが、ここでお別れだ。
塔子とリカにじゃあな、ありがとうと言って、綱海がサーフボードを持って合宿所の方に向かった。
振り返ると、後ろではなりやら塔子とリカが喧嘩している。仲がいいなあと少しこちらも嬉しくなる。
身体をまた合宿所に向かせると、何やら後ろから声がする。



「条介!またなー!」

はっきりと聞こえた。
綱海はドキッとした。
下の名前で呼ばれるの慣れていないせいである。親しいやつでもあまり下の名前で呼ばれることは滅多にない。
何故だか振り返るのが、恥ずかしい。

「おう!またな塔子!」
と振り返らず手だけ振った。


「ちゃんと約束守ったから、今日は夜黙ってよ」
顔が熱い。
塔子は顔を俯せがちに言った。約束とは綱海を下の名前で呼んだら、夜は静かに黙るというもの。
簡単だと思っていたが思っていた以上に、恥ずかしい。

「塔子耳真っ赤やで〜」
ニヤニヤ笑いながらリカ言った。
あちらさんも真っ赤やったし大成功やー!とリカは上機嫌で歩いていった。







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