4主=青年(カイン) 2主=少年(リオウ) 「君はさ、どうしようもない絶望を味わったことがあるかい?」 灰茶の髪と赤いバンダナを揺らし青年は少年へと問い掛けた。青い瞳は赤を映し、ただ虚ろに少年を見る。 「君はさ、何故どうしようもない絶望を何度も味わいながらも前へ進めるんだい?」 「貴方って結構馬鹿ですよね」 溜息を吐こうとして、しかし直前で踏み止まり少年は青年へと言葉を返した。 大げさに頭を振りながら琥珀色の髪を揺らす。炎に照らされ、額の金冠が赤く鈍く光った。 「僕は前になんて進んでませんよ、ただ守りたくてその場で足掻いてるだけです」 少年はその両手に握る己の武器をさらに強く握り締め、地面を見つめながらそう答えた。 その答えに青年は何も返さず、ゆっくりと少年から視線を外すとただ炎を見つめた。 「何で、君はそんなに真っ直ぐなのかな」 その両手に血に濡れた黒い刃を握り、青年はゆらゆらと揺れる炎を海を思わせる青い瞳で見つめていた。 何で前を向いていられるんだろうか、と青年は小さく呟いた。 炎は風に揺られ、さらに強くなる。青年と少年は火の粉と風を浴びながら、血を浴びたその体でただ崩れていく「生きていた者がいた証拠」を眺めていた。 「僕は何でそれだけ打ちのめされても、剣を握ってまた前に進めるのかが不思議ですけどね」 少年は、今度こそ何の遠慮もせず溜息を吐き自分に背を向けたままの青年に歩み寄る。 青年は少年の動きを知りながらも動かず、虚ろな目で炎を見ていた。 「帰りましょう、貴方を置いていったらマクドールさんに怒られちゃいますから」 「……そうだね、帰ろうか」 青年が見つめていたのは未来か、過去か。少年には分からないことだった。 だがあの優しくてあたたかい場所に帰ったら、青年は確実に未来、とは言えなくても今を見てくれるだろうと、少年は青年の手を握り締めた。 |