ED直前のため薄暗い。 神様なんていない。 守りたかったものは、失いたくなかったものは、もう無い。全て小さな手からこぼれ落ちてしまった。 「ジョウイ」 約束の地へ、約束の地へ。またここで会おうと誓った約束の地へ。 全てを捨てて、全てをこの手で奪いにいく。 泣きはしない、泣く資格はない。これは自分が望んだことなのだから。 自らの意志で、自分は全てを奪いにいく。 徐々に沈んでいく太陽。まだ間に合う、まだ。 嫌というほど手に馴染む武器を両手に握り締め道を辿る。終わりへの道だ。 体と心がざわざわとする。恐怖によく似た感覚。 「ななみ」 国を守った。仲間を守った。一番守りたかったものは何一つ守れなかった。 国が守りたかったわけでも、仲間を守りたいわけでもなかった。ただおてんばで元気で、子供のような、しかし最後まで確かに姉であった人と。どうしようもなく馬鹿で不器用で、どうしようもなく優しい親友を守りたかっただけだった。 いつから守るべきものを間違えたのか。否、間違えてはいない。 姉と共に逃げなかったのは、弱さだ。全てを、仲間を、捨てられなかった自分の弱さ。 それが自分が本当に守りたかったものを失うことに繋がったとしても後悔はない。全て自分の選んだこと。 「きたよジョウイ」 約束の地へ。全ての始まりであり終わりの地へ。 「――、ジョウイと、喧嘩しちゃ……だめだよ……」 「――、一緒にナナミのところへ帰ろうね」 神様なんていない。 きたよジョウイ。約束の地へ。 ごめんねナナミ。約束は守れそうにないよ。 まだ、諦められないんだ。 神様なんていない。 自分の手で掴んでみせる、こぼれ落ちたもの全てを、取り返しにいく。 「神様なんていない」 だから、僕が僕の神様になる。 |