罰が随分とうるさい。ティルの持つソウルイーターのように押さえ込む必要はないが、こんなに騒いでいるのは何十年ぶりだろうと思う。
本当にこんなにうるさいのは、まだ罰に許されていない時にまで遡るかもしれない。

そんな罰の紋章の悲鳴を聞きながら、ラズロは血の臭いを落とすことに専念していた。
返り血は浴びていないはずだがやはり血の臭いはまとわりつく。少し戦場を知る者にならば、すぐに気付かれてしまう。
ティルのところに血の臭いは持ち帰りたくなかったが、ラズロはそれよりもソウルイーターの異常のほうが気になってしまった。今はその選択が正解だったと分かるが、やはりティルの元に血の臭いは持ち帰りたくなかった。
共に過ごした時間は短くても、何が嫌なのかくらい分かるものだ。

ざばりと頭から水を被り誰もいないのをいいことに左手の包帯を解く。見た目はいつもと変わりないように見えるが、今も悲鳴は聞こえている。
悲鳴を聞くと、昔のことを思い出す。紋章を使うたび、倒れるたび聞こえた悲鳴。この悲鳴は紋章に命を奪われた者の嘆きなのか、それとも紋章自体の悲鳴なのか、結局ラズロは分からずにいる。
だからこの悲鳴が何を叫んでいるのか分からない。ただの共鳴、というには激しすぎ、その他の原因というには大人しすぎる。
「私を責めてるいるのか」
百五十年、海賊騒ぎはないでもなかったがラズロに役が回ってくることはなかった。
許しと償いを司る紋章に、今日の行いを責められているのか、と考えてラズロは小さく笑った。そんなことあるはずがない。償いを終え許しを得たあとも、ラズロは人を斬っている。
どうにもこの悲鳴は昔を思い出させて自分を弱く、不安にさせるとラズロは溜息を吐いた。早く部屋に帰ってティルを安心させて、ついでに自分も安心させてもらおう。
そのあと、おそらく今回の共鳴相手であろう人達に会いに行く。
昼間森で出会った少年。好戦的だが、決して自分からは仕掛けてこない紋章の気配は確かに少年の右手から感じたのと同じものだ。
そして、無に近い風の気配も同じ場所から感じる。
偶然って恐ろしいなと心の中で呟いて、悲鳴をあげ続ける生涯の伴侶を宥めるように左手の甲を撫でた。


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