守りたいものがあった。



それは普通に生きていれば難しくも簡単なことで。自分が軍主なんて地位につかなければ守れたもので。
守らなくても、生きていたはずのもので。

「な、なみ」

崩れ落ちた少女と去っていく親友。どこで間違えたのか、どこで守るべきものを間違えたのか。
間違ってなどいない、自分は自分が思うがままに行動した。最善だと思う道を歩いた。
なのに、一番守りたかったものは、二つとも自分の手から滑り落ちてしまった。

少女と親友と自分が世界の全てだった。他にも大切なものはたくさんあったが、二人のためなら世界だって敵にできた。
あそこで少女と逃げてもよかったのだ。しかしそれでは親友は帰ってこないと思った。
逃げてしまえばよかったと思う自分を嫌悪した。少女がどうなったのか知らない、知ろうと思わない自分に嫌悪した。
親友を、恨んでしまいそうな自分が憎かった。
少女が死んでも争いは続く。少女が倒れても親友は敵だ。
泣きそうだった、泣き崩れてしまいたかった。それでも捨てることはできない。逃げてしまうこともできない。
結局自分は立ち上がり進むのだ、少女を失い親友を討つ事になっても。



少し出かけてくると軍師に声をかける。返事が返る前に石版前の魔術師を引っ張って、鏡の前の少女の手を取り城から飛び出した。


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -