守りたいものがあった。 それは普通に生きていれば難しくも簡単なことで。自分が軍主なんて地位につかなければ守れたもので。 守らなくても、生きていたはずのもので。 「な、なみ」 崩れ落ちた少女と去っていく親友。どこで間違えたのか、どこで守るべきものを間違えたのか。 間違ってなどいない、自分は自分が思うがままに行動した。最善だと思う道を歩いた。 なのに、一番守りたかったものは、二つとも自分の手から滑り落ちてしまった。 少女と親友と自分が世界の全てだった。他にも大切なものはたくさんあったが、二人のためなら世界だって敵にできた。 あそこで少女と逃げてもよかったのだ。しかしそれでは親友は帰ってこないと思った。 逃げてしまえばよかったと思う自分を嫌悪した。少女がどうなったのか知らない、知ろうと思わない自分に嫌悪した。 親友を、恨んでしまいそうな自分が憎かった。 少女が死んでも争いは続く。少女が倒れても親友は敵だ。 泣きそうだった、泣き崩れてしまいたかった。それでも捨てることはできない。逃げてしまうこともできない。 結局自分は立ち上がり進むのだ、少女を失い親友を討つ事になっても。 少し出かけてくると軍師に声をかける。返事が返る前に石版前の魔術師を引っ張って、鏡の前の少女の手を取り城から飛び出した。 |