ただいちゃついてるだけの坊4。










ゆっくりと唇が触れて、離れた。
一瞬の熱。ただ触れるだけ。目から頬、耳。最後に唇。
一度目はあっさり。二度目は少し長く。三度目、唇に舌が押しつけられた。
「……待った」
「なに」
青と琥珀が見つめあう。ティルの瞳には分かりやすく不満の色が浮かんでいた。
「なに、はこっちの台詞なんだけど」
ラズロの言葉は続かない。何を、どう言えばいいのか言葉を探す。そうしている内にじれたティルが再び唇を海のような青の瞳、瞼へと落とした。
「ティル」
本当に困ったような、何が何だか分からないといった声。ティルもラズロが何故そのような状態なのか分からない。自分達は好き合っていて、気持ちも通じているのに。
「ラズロ?」
「あの……」
ティルはどうしたのかとはっきりと濁さずに伝える。言い淀んでも何も言わず穏やかにゆっくり待ってやる。ラズロは自分の意見を相手に伝えるのが苦手だ。それが好きな人に対する我儘だとなおさら。
それが戦闘や作業的なことに関してはまったく別人のようになる。もう少し私的なことでも積極的に、我儘になってもいいとティルは思っている。ラズロはいい子過ぎるのだ。
「……変なんだ」
ティルの態度に観念したのか、ラズロはぽつぽつと話しだした。
ベッドに腰掛けているラズロの隣に腰を下ろす。いつもは強い意思を宿す瞳が不安でゆらゆらと揺れている。
「少し前まで、君は私のことが嫌いだったんだろ?」
「あぁ」
「……今こうしてるのが、変で」
ティルはラズロを嫌っていた。唯一無二の親友の過去を知る人。テッドの天魁星。
それは嫉妬だったのかもしれない。
ラズロは風や雲のようで、のらりくらりと生きていた。それが、何故だか許せなくて。ティルが嫌だと知っていて、ティルが知らないテッドの話をするラズロのことが嫌いだった。
何を思ってテッドはこの人についていこうと思ったんだろうかと思う。どうしても好きになれなかった。しかし同時に興味があった。
今はティルの右手に宿る死神を、ソウルイーターを宿していたテッドが。人の死を何より恐れる彼が、この人のためならいいと、戦場に身を置く決意をさせた人。
海のような、時に炎のような青の瞳。
「好き、それだけじゃ理由にならない?」
「なる、けど」
「ならいいだろう? ちょっと黙って」
緊張を解すように額に口付ける。唇と唇を合わせれば、もうどうでもよくなったのかラズロから力が抜けた。
「おれさま」
「消極的なよりは好みじゃないのか?」
「愛らしさがほしい」
「愛らしいだろ?」
「もう好きにしなよ……」
遠慮なく。そう呟いてティルはもっと深く繋がるため、ラズロをベッドへと押し倒した。


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