4主とテッド。くだらない話。 何となくBadEndな雰囲気なので注意。 テッド、俺は思うんだ。優しい君は怒るだろうけど。 思ってしまうんだ、明日全てが終わるからこそ。 きっとこれが最後だから、だから君に聞いてもらいたい。 テッド、憶えていて。俺が確かここに存在したことを。 「くだらないな」 早く寝ろ、とテッドは冷たい態度で少年に接する。まだ大人とはいえない容姿、しかし子供ともいえない雰囲気。 少年はその言葉に困ったように笑うと、ごめん、と呟いた。 少年の口から出たのはたしかに謝罪の言葉であったが、それはまったく謝罪としての重みを持っていなかった。 「悪いと思ってないなら謝るな」 「だってこれしか知らない」 少年は本当に困った顔をテッドに向ける。謝ることしか知らないのだと。 「ごめんねテッド」 謝るな、とテッドは俯きながら強く言う。しかし少年は謝罪の言葉を繰り返した。 「止めろ」 「ごめんなさい」 テッドは眉間に皺を寄せ奥歯を噛み締める。相変わらず少年は困ったような顔をしていた。 どんなにテッドが強く言おうと少年は謝罪し続ける。そんなものただお互いに重いだけだ、とテッドは苦しげに呟いた。 俯いたままのテッドに少年はさらに謝罪を繰り返す。もう何に謝っているのか少年にも分からない。 「ごめんねテッド、お願い」 お願い、の言葉にテッドはゆるゆると顔を上げる。 「俺のこと、憶えてて」 少年は何時の間にか泣きそうな顔になっていた。声も小さく弱々しい。 よく見れば微かに震えているのが分かる。その姿を見て、声を聞いて、テッドはさらに奥歯を強く噛み締め手のひらに爪が食い込むほど強く手を握った。 「生きたいって言えないんだ、知らないんだそんな言葉、だけど」 少年の海のような青の目が揺らぐ。ランプだけしか明かりの無い薄暗い部屋の中、その青の中にランプの赤い光が見えた。 「死にたく、ない」 掠れて、弱々しく、それでいて強く切実な思いと重たさを持ってその言葉は吐き出された。 「やめろ…」 情けないほど震えた音。泣けばいいのに泣かない少年。泣き方を知らない少年。 自分の方が泣きそうで、テッドは再び俯いた。 「生きたい、なんて言えない、けど、死にたくない」 死にそうになるほど、あたたかさに触れるたび、死にたくなくなる。 しかし同時に、死にたくなるのだと少年は言った。自分を頼ってくれる人たちのためなら、死んでもいいと思うのだと。 少年は気づいてしまった、日に日に深くなる赤い闇に。 そしてテッドも気づいてしまった、右手に宿る死神が、鎌を振り上げたことに。 気づいてしまったんだ、明日、俺の全てが終わることに。 テッド、俺は君の光にはなれなかった。 テッド憶えていて、俺が確かにここに存在したことを。 俺が、最後まで立っていたことを。いつか君が本当の光を見つけるまで。 テッド、元気で。いつかまた、この海で会おう。 |