※帝人×臨也。帝人様がセクハラ魔。臨也さんがブルマ。
帝人攻めチャットからその一。










「それで、話をまとめると貴方は真剣に下着を選んだ挙げ句羞恥心の欠片もなくそんな格好をしていると、本当に変態ですね臨也さん」
「やだなあ、下着は女性用じゃないと認めないって言ったからわざわざ専門店で買ってきたのに、この服も持ってきたのは帝人君でしょ?」
「……」
「普通に痛いんだけど帝人君、……っ!」
「ちょっと黙っててくれます? 手元が狂うんで」
 縄が擦れたのが予想外に痛かったのか今まで戯れのように帝人を邪魔していた臨也がおとなしくなる。その隙に手早く臨也の手足を縛った帝人は臨也から少し離れその姿を観察して、心の中でこれはないなと呟いた。
 折原と書かれた名札がついた体操服。しかし問題は上ではなく下で。所謂ブルマと呼ばれるものを身に付けた臨也はなかなかに滑稽だった。
 すらりと伸びた足は白く男性とは思えないくらいに綺麗だ。それが余計笑いを誘う。
「……臨也さん」
「人にこんな格好させて縛っておいて何その残念なものを見るような目」
「いえ……」
「ここまでしといて何が不満なんですか太郎さん! 甘楽泣いちゃいますよ!」
「ああ、いいですねそれ」
「え?」
 泣いてもらいましょうかの言葉と共に、するりと、まだ幼い指が臨也の足を撫でる。臨也にとって竜ヶ峰帝人とは温厚で、たまに変なことを言い出すが基本的に常識的な人間のはずだった。自分の中の彼に対する認識が変わろうとしている。そう感じた臨也は帝人から体を離そうとするが手は後ろで縛られているし、足は座ったままの体勢でがっちりと椅子に括り付けられていて動かない。
 爪先からするすると撫で上げてくる指から逃げようとするががたがたと椅子が揺れるだけだ。
「……男の足なんて触って楽しい?」
「臨也さんの足は、まあ楽しいですね、綺麗ですし」
「……内股撫でるの止めてくれない?」
「ここらへんが良いんですか?」
「ちがっ、ちょっと帝人君……」
 ただ撫でていただけの指が目的を持って動きだしたことに臨也は目を見開いた。やわやわと太股を揉まれて変な声が出る。帝人はどんなに睨まれようとただ意地悪く微笑むだけだ。
 無意識に奥歯を噛み締めると、帝人の指は足から離れ臨也の唇を撫でた。
「あんまり強く噛まないほうが良いと思いますよ」
「ありがとう気を付けるよ」
「……やっていいって言ったのは臨也さんですよ」
「ここまで本格的だとは思ってなかったんだよ、この体操服とかどうしたの」
「正真正銘貴方の妹さん、折原さんのものですよ」
 来良だったなそういえば……と呟く声を遮るように、帝人はふっと生まれた衝動に堪え切れず臨也の唇を割って指を口の中へと突っ込んだ。堪える気などなかったのかもしれない。綺麗な顔を見てると汚したくなるなんてどうかしてると思うが、帝人はそんな自分をあっさりと受け入れた。
 臨也の口から呂律の回らない声が出る。それに反応するようにさらに奥へと帝人は指を突き入れた。
「ん、ぐっ……!」
 吐き気を堪えるように喉が動くのを指先に感じて帝人は何故か感動する。面白がって喉を撫でれば臨也の目から生理的な涙が零れ落ちた。それにまた帝人は目を輝かせる。
「臨也さんも泣けるんですね……」
 指が抜けた途端咳き込んだ臨也はぐっと帝人を睨みながら俺を何だと思ってるのさと呟くが、音は掠れて声にならない。どうしてこうなったかと考えて出てくるのはひとつの契約内容だけで。
 一日臨也さんを好きにさせてくれませんか、そうすればそのお仕事お受けしますよ。あの言葉に頷いたのがいけなかった。傷つけるようなこと、勿論殺すようなことは禁止という約束は今思えば穴だらけだった。
 帝人に臨也を傷つける意思はない。臨也が暴れて傷ついてもそれは自業自得だ。だから帝人が縄を取り出した時も何もできなかった。縄は無理に解こうとすれば擦れて痛い程度でそれを契約違反とは言えない。
「帝人君……これは契約違反じゃないかな、俺は肉体的とも精神的とも言ってないんだけど」
「精神的なんて貴方がそう訴えればそれだけの証拠の無いものじゃないですか、それにそんな元気な姿で傷ついたなんて言われても困るんですけど」
 本当に困ったように笑う帝人はどこまでも普通だ。目の前に椅子に縛り付けられた自分さえいなければと臨也は笑う。
「肉体的には? この縄、結構ゆるいけど長時間は苦痛だと思うんだけど」
「ああ、それは契約違反ですね、ちょっとあの折原臨也がそんな格好で拘束された姿を見たかっただけなので、今解きます」
 悪趣味。放たれた言葉に帝人は困ったように笑うだけだ。
 ぱらりと、簡単に解かれ床に落ちる縄を見て、自由の身になった臨也は悪寒を感じる。にこりと笑った帝人の姿が臨也の目には不気味に映った。
「折原さん」
 何で突然名字、と思う前にぐっと手が伸びてきて臨也の首を掴む。咄嗟に抵抗するが重力に逆らえず臨也と帝人は共に床に倒れこんだ。
 衝撃で喉からくぐもった声がでる。首と腰の下に抱きしめるように帝人の腕が存在しており痛みはない。傷つくようなことはしないという約束をこれで守っているつもりだろうかと臨也は内心笑うが、自分の上に馬乗りになっている帝人の顔を見て息が詰った。
「帝人く」
「楽しいことしましょうか、折原さん」
 臨也でさえぞっとするほど冷たい瞳、しかし口の端を吊り上げてとても楽しそうな、嬉しそうな声で帝人は言う。
 腰の下から抜かれた手は再び臨也の内股を撫で上げ、帝人は冷たい瞳を隠すかのように一見優しげに微笑んだ。

「臨也さん下着見えてますよ」

 妙な雰囲気に流され普段なら何事も無かったかのように振舞えるだろう言葉に羞恥心から頬を染める。確かに妹の物とあってサイズの小さいブルマから黒のフリルがはみ出しているのが見えた。
 内股を撫でる手の位置の危うさと、柄にもなく耳まで真っ赤になっているだろうという事実に臨也は口には出さず叫び声を上げる。
(フリルになんかしなきゃよかった……!)










次回、スク水青葉。
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