4主=カイン
最終決戦前夜







海。墨を流し込んだかのような黒。夜の海。
昼の海も好きだが、自分はこの海も好きだった。全てを飲み込む、黒い海。
明日で全てが終わる。決着がつく。

霧で濁る月に左手をかざす。ゆらゆらと揺れる手の甲に、渦巻いた赤黒い紋章が見えた。
覚悟はある。許しはいらない。大切なものを守れるならば。
罰という名でありながら、許しと償いを司る矛盾したこの紋章に明日は頼ることになるだろう。
左手を右手で包み込み、労わるように撫でた。
「明日はよろしく」
紋章に向かって微笑みながら声をかける。今甲板に人はニコを除いて他には居ない。皆気を使ってくれたのだ。
まぁもう夜遅いというのもあるのだけれど。
「よろしく」

さぁもうそろそろ明日に備えよう。
今はまだ、今はまだくれてやるわけには行かない。


明日お前に全てをくれてやろう、我が命から髪の一本まで全て。
灰となり、この海に捧げよう。


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