4主=ラズロ 最終決戦前夜 「僕の全てを、君に預ける」 少し歩みを進めればその手を握れる距離で、ラズロの友はそう言った。 ラズロの目を真っ直ぐな瞳で見据え、その口は言葉を紡ぐ。 「スノウ……」 ラズロにとってスノウは唯一無二の存在であり、代わりなど居ない。ラズロの親友という立場に代われるものならこの船には沢山居るが、ラズロにとってのスノウという人の代わりになれるものは世界中を探したとしても、一人も居ないと断言できる。 「スノウ、俺は」 「言いたかったのは、それだけだから」 「スノウ!」 言いたいことは全て言ったと背を向け歩き出そうとするスノウを、ラズロの軍主としての声が呼び止める。 ゆっくり振り返ったスノウの目に映ったのは、少し眉間に皺を作ったラズロの顔だった。 見る人が見ないと分からない表情の変化であったが、スノウには「あぁ、怒ってる」とすぐに分かった。 あの時、二人の間には大きな溝が出来てしまった。スノウはラズロの命を売ったようなものだ、今こうして共に居ることも奇跡に近い。 スノウは許されないことをしたと溝を広げる一方だが、ラズロはスノウを許していた。その違いがさらに溝を広げ深めている。何故許せるのか、とスノウの気を煽っている。 「……君は、もう僕を昔のように、親友とは呼んでくれないかもしれない、でも」 「ラズロ……」 「君は……ずっと、昔からずっと、僕の大切な」 「ラズロっ!!」 その先は言うな、とスノウが声を張り上げる。それは、言ってはいけない。 しかし、ラズロは少しだけ嬉しそうに微笑みながら、唯一の親友に向かって構わず言葉を紡いだ。 |