ラズロを表すなら、そう、意味が分からない。
ティルはラズロの後姿をぼんやりと見つめながら考える。やることなすこと意味が分からない。存在すら疑ってしまう。それほどラズロの存在は曖昧だ。人間らしくない。
ラズロが話すことは常に興味深いが同時に不快だ。それは決まってテッドの話で、ティル個人の感情なのだけれど。
戦争が終わり、ティルがテッドから託された右手の死神を狙う者もいなくなった。それでもラズロはティルについてくる。監視か、と問えばそうだね、と返る声。お節介か、と言えばやはりそうだねと返る声。からかっているのかと少し不満を見せながら言えば、君は面白い子だねと答えが返る。
軍主の君には無かった姿だと笑うラズロの心情がティルには分からない。理解してはいるが、分からない。
このラズロに抱く複雑な気持ちを表すにはどんな言葉が、そもそも言葉で表すことが可能なのだろうかとティルは溜息を吐いた。
「どうしたの? 疲れた? 少し休む?」
「平気です……」
ラズロはそれ以上言葉を紡ぐ気は無いようで小さく、そう、と呟くと不思議そうな表情を浮かべ再び前を向いて歩き出す。
このどうしようもないもやもやとした感情。自分らしくないと思いながらもティルはその感情を行動に移せないでいる。この感情の正体が分かればどうとでもできるのにと思うが、その時点で自分らしくないことをティルは理解していた。
「ラズロさん」
「はーい?」
これは珍しいという感情が滲むいかにも楽しそうな声に、一瞬呼んでおいてなんだが無視しようかと思う。不機嫌な顔でも無視してもラズロは気にしないだろうが、それはいくらなんでも失礼だと育ちの良さから咄嗟に笑顔を浮かべ、たところで何をやっているのだろうかとティルは自分で自分を嫌悪した。本当に自分らしさをどこに落としてきたのだろうか。
「だいすきらいです」
「え?」
「だいすきらいです」
「それは……大好きって事でいいのかな」
「嫌いとも言っています」
「……どっち?」
不思議そうな声で、でも満面の笑みを浮かべて。子供の戯言、冗談としか思っていないのだろうか。しかしこの感情をあっさり理解されても複雑だ。本当に複雑な感情だと思う。それでもティルは何もせず止まっていることができない。それは自分ではないからだ。
「何でテッドが貴方についていこうと思ったのか分からない」
「私はテッドがなんで君と親友になれたのか、何となく分かるな」
「何故?」
「君はとても素直だから、歪んだ人間と歪んだ人間は親しくなれないんだよ」
「貴方は、昔は歪んでいなかったからテッドと親しくなれた?」
「私は昔から歪んでいたよ、だからテッドが私に光を見た」
本当に意味が分からない人だ。ティルが眉間に皺を寄せるのを見て、ラズロは小さく笑う。
「私は君のことが好きだな、テッド関係のことを抜きにしても」
「……だいすきらいです」
「意外とそういうとこ可愛いよね、君」
嫌いだとも言えず、好きとも言えない。これはティルの意地だ。一度決まったものを変えることができない、真面目というべきか頑固というべきか。
にこにこと笑うラズロが気に入らなくて、ティルは少し高い位置にあるラズロの頭を引き寄せ額に唇と落とす。どうも子供っぽいのは経験が無いので許して欲しいと思う。
「宣戦布告です」
「……君は私に何を望んでいるのかな」
「ただ、受けるか、受けないかを」
「受けておくよ」
少し表情が崩れて困ったような笑いを浮かべるラズロに、ティルは少し機嫌が良くなった。ラズロは意味が分からない。人間らしい表情をしていると身近に感じられて、ティルは少しだけラズロに対する負の感情が薄れるのだ。
「だいすきらいです」
笑顔で伝えれば、今度はラズロが溜息を吐いた。
「素直になればいいのに」










坊はムードというものを理解したほうがいいと思います。このサイトの1主は感情が飛びに飛び嫌悪、尊敬→恋情に吹っ飛んだ俺様です。坊→4というより両思いというより両片思いのようになってしまって申しわけありません。一応恋人フラグはたってます、この後は坊が完全に吹っ切れて4主が若干引き気味になり後はサイトにある小説の通りです。

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