お前は誰だ少年と罰の続き。
流された後の4主。










赤と黒。悲鳴。
取り込まれた、と思うのに時間はかからなかった。
ぐるぐると赤と黒が渦を巻く。逃げられない一本道、いつもと同じ。

「……?」

しかし、いつも過去の夢を見せる赤い光は存在せず、そこには女性が立っていた。
やわらかい金色の髪に、オベルの民族衣装、だろうか。誰かに似ている、と思ったがそれが誰かは分からない。
赤と黒。その空間で女性だけは罰に捕われていないようで。
お互い一言も言葉を発することはなく、やがて女性の姿は霞み揺らぎ消えてしまう。
あたたかい、緑の光には見覚えがあった。
かつて罰に取り込まれそうになった自分を守った、その光は、



かちり、と音がして何かが落ちる。
瞼を開けば、目の前には眩しい太陽、空と雲。

「……」

小舟。落ちたのはナイフ。
果ての見えない、青いばかりの海。
自分の愛した世界。

「どこだここ……」

とりあえずナイフを拾う。装飾もないそれは見覚えのないものだ。
死者に贈るものにしては愛想がない。他に小舟にあるのは皮袋とオール。いつも通り腰にあるのは二振りの剣。
皮袋の中身は、饅頭と少しの食料に、薬。あきらかに饅頭が中心の中身には笑うしかなかった。

「オールがあるってことは漕げってことかな」

一人は心細いなと呟きオールを握り顔を上げると、遠くに大型船が見えた。

「あぁ……」

結局、誰も諦められないんじゃないかと口に出すようなことはしない。
ただラズロはゆっくりと立ち上がり、共に戦った船に向かって手を振った。


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