進撃の巨人 | ナノ



「よしよし」
「みゃー」
「ふふっ、今日も来たんだね。お前は」
「にゃー」

エレンはパチパチ、と目を瞬かせた。
驚いたというよりは目の前で起こっている事が理解出来ないといった感じの反応である。
何と非現実な光景だろうか。もしかすれば今自分は夢を見ているのではないか?
そうだ、きっとそれだ。夢ならどんな非現実な事であろうと有り得るのだ。
この前なんか女装した鎧の巨人がウォールマリア美女コンテストで奇跡の満点優勝を果たすという、どこからツッコミを入れて良いのかも分からない様な夢を見たぐらいなのだから。
鎧の巨人が栄えあるミス・ウォールマリアに輝くのに比べれば、今見ている夢など特に騒ぎ立てる程のものでは無い。

「ん?お腹空いてるのか?」
「にゃぁ」
「よしよーし。昼飯の残りを持って来てやったからな。たんとお食べ」

しかしいくら目を瞬かせても目の前の光景は消えない。夢が覚めない。
手の甲で目を激しく擦っても、足を踏んづけても頬を引っ張っても、この非現実な事態は尚も現在進行形で続いている。
これはもしかしなくとも……夢ではない?

「にゃー」
「美味しいか?まだあるからゆっくり食べるんだよ?」
「みゃあ」
「ふふふ……可愛い」
「本当だ。すげー可愛いな」
「!!?」

とうとうこれは夢ではないとの決断を下し、エレンは彼女の独り言に割って入った。
振り返ったアニの瞳はギョッと見開かれている。それも束の間で、険しい表情に浮かぶ驚きの色はすぐに憤怒へと変貌を遂げた。

「……エレン」
「よ、よう、アニ。どーした?そんな怖い顔して?」
「いつからそこにいた」
「いつからって、最初から?」
「………」

スクッと立ち上がったアニは、何故かあの独特のファイティングポーズの構えを取っている。
一体どうしたというのだ。エレンには皆目見当がつかなかった。今は対人格闘の時間でもなければ、他のどの授業の時間でもない。平穏な空気の流れる昼休みだ。
それなのに何がどうした事だ?何故彼女は、こんなにも殺気立っている?

「フッ!」
「どわぁっ!?」

質問も弁明も、ともかく何を言う暇も与えられず、アニ必殺の蹴りにエレンはいつもの如く宙を舞う。
反転した視界の中でパン屑にありつく小さな子猫と、恐ろしくもどこか可愛げのある虎の如き女が見えた。

「誰にも言うなよ」
「……はい」

どんなに蹴りが強くとも、あんな姿を見せられた後じゃこれっぽっちも怖くない。




にゃんにゃんガオー




(おはよう、アニ)
(ミカサか。おはよ)
(……みゃー)
(!?)
(にゃんにゃんにゃぁ)
(言い触らしたな、あの駆逐頭!)









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