べるぜバブ | ナノ






私という人間は、どうにも他からの影響を受けやすい人間らしい。

「テレビで障害者特集っていうのがやっててね」

それは目が見えない、視覚障害者の話だった。
事故に遭った事で後天的に死力を失ったしまった少女。突然変失われてしまった光に苦悩し、葛藤し、自ら命を絶つ事も考えた事があるという。
結局、その少女は家族や友人の助けを得て、自分の運命を受け入れたらしい。今では愛する夫と共に子宝にも恵まれ、幸せな生活を送っていると語っていた。

「それで思ったの。もし、私の目が突然見えなくなってしまったら……どうなっちゃうんだろうって」

目が見えなくなる、とは言うが、本当に何も見えなくなってしまうのだろうか?
今目の前に広がる見慣れた町並みも、頭上に広がる茜色の夕空も、隣で黙りこくっている仏頂面の彼の顔も。
どんなに何かを見たいと望んでも、目の前には永遠に暗闇があるだけ。そんな世界で私は、テレビの少女の様に強く生きられるのだろうか。

「いやだなぁ」
「………」
「こんな事考えてる私って馬鹿だと思う?」

男鹿の顔は不機嫌そうだった。何かを深く考え込んでいる様にも見える。

「よく分からん」

ようやく口を開いたかと思えば、返って来たのは男鹿らしいと言えば男鹿らしい答え。
思わず「呆れた」と呟いてしまう。男鹿はあらかさまに表情をムッと歪めた。

「分からねぇよ。何も見えねーとか、実際にそうならねぇと」
「じゃあ男鹿は私の顔が一生見れないって言われたらどうする?」
「すげームカつくからぶっ飛ばす」

男鹿の言葉は筋が通ってない。メチャクチャだ。しかし、やはりそれは彼らしいと言える。

「まぁでもアレだ」

そっぽを向いて夕日を仰ぎながら、男鹿は言った。
影に覆われたその背中は広く大きくて逞しい。私の知る誰よりも男らしいと思った。

「もしお前の目が見えなくなっても、俺はお前の傍にいるからよ」




唯一な確定事項




何があっても、それだけは覆らないと確信してる。










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