バイオハザード | ナノ






ガサリ。
微かな物音にジルが目を覚ますと、大きな背中をこちらに向け、何やら作業に勤しむ相棒兼恋人の姿が見えた。

「……クリス」
「ジル?すまない、起こしたか」

振り向いたクリスは既にジャケットを羽織っていて、その下にはBSAAの隊服が見える。
手に持った着替えをスーツケースに詰め込んでいる彼が、今日から長期の任務に出発なのだという事を思い出した。

「もう行くの?」
「ぼちぼちな」
「年明け早々に忙しい事ね」
「君だって似たようなものだろ?」

クリスマスから年末にかけて、ジルは北欧で起きたバイオテロの鎮圧に駆り出されていた。
年も越すという日にようやく帰って来た彼女だが、それと入れ替わりになるように今度はクリスに指令が言い渡されたのだ。
全く息つく暇もないな、と二人して笑い合った。こんな事は彼等BSAAにとって日常茶飯事なのだ。バイオテロは時と場所を選びなどしないのだから。

「約束、守れないみたいね」
「仕方ないさ。君の作る“おせち料理”とやらは来年食わせてもらうよ」

苦笑したクリスが立ち上がってケースを持つと、いよいよ出発の時間なのだと悟る。
天気を確認する為か、ちらりとカーテンを捲って窓の外に視線を向けたクリスが目を見張った。

「なぁ、ジル」
「ん?」
「これが君が言ってた“初日の出”ってヤツなのか」

クリスに習ってジルが窓の外を除くと、丁度白み始めた空に眩しい太陽が昇るところだった。
その見事な美しい景色に二人は暫し言葉を失う。

「日本じゃ初日の出を見ると、その年は良い事が起きるんだよな」
「さぁ。詳しい事は私も知らないけど……。見れればそれはおめでたい事らしいわ」
「そうか、それは幸先が良い。じゃあ今年は何か良い事があるかな」
「……クリス」

名前を呼ばれて振り返ったクリスの頬にふわり、と温かな感触が落ちる。
一瞬の事に呆然とする彼にジルは悪戯に成功した子どものように笑う。

「行ってらっしゃいのキスよ」
「……最初の任務の出発をジルのキスで見送ってもらえるとはな。今年は本当に良い事がありそうだ」
「気を付けて」
「あぁ」

もう一度、最後に抱擁と接吻を交わす。
愛しい恋人と昇り行く朝日に見送られ、クリスは戦場へと旅立った。




2013.1月拍手





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