FAIRY TAIL | ナノ






*幼少期



夕暮れ二人で



「さっき河原を通りかかった時に見たんだが、まーた妖精の尻尾が派手にやらかしてたよ」
「ほら、いるだろ?ピンク色の髪の毛をしたヤケに凶暴なガキンチョ」
「アイツが年上の連中何人も相手に喧嘩吹っ掛けててさ」

とある日の夕暮れ時。
この日も困難な仕事を終え、マグノリアの街へ帰って来たエルザの耳が、すれ違った大人達の雑談を拾った。

妖精の尻尾。ピンク色の髪。凶暴。ガキ。喧嘩。
連想出来る人物は一人しかいない。
エルザは深く溜息を吐き、ギルドに向けていた爪先をくるりと方向転換させた。向かう先は勿論河原である。

「一般人相手によもや魔法など使っていないだろうな」

持ち前の責任感とお節介根性をフル稼働させて、エルザは走り出した。




******




「――ナツ!」

河原へ辿り着いたエルザを迎えたのは、彼女にとって想定外の光景だった。
背後から二人がかりで取り押さえられているナツが、動けないのを良い事に殴られ蹴られ、されたい放題だ。
ざっと見ただけでも相手の数は優に10を超えている。
確かに何人も、とは言っていた。しかしあれでは、いくらナツでも多勢に無勢ではないか。

「貴様等!ナツを放さんかっ!」
「げっ、あいつ、妖精の尻尾のエルザ!?」
「やべぇ、逃げろぉぉっ!」

鬼気漲る形相で向かって来る最強の増援に、少年達は悲鳴を上げて散って行く。
後に残されたのは全身ズタボロ、ボロ雑巾の方がまだマシな有り様のナツだけだった。

「おい、ナツ!しっかりしろ!」
「う……ん?エル、ザ?」

軽く頬を叩いてやれば、うっすらと開いた瞼から潤んだ瞳が覗く。
あれだけ派手にやられていた割には驚く程の軽傷のようだ。
流石は竜と同じ魔力を身に宿す滅竜魔導士と言ったところか。その体の頑丈さにはエルザも舌を巻いた。

「あい、つ等は?」
「もういない。全く酷いやられ様だな」
「や、やられてなんかいねーよッ!……痛っ!」

屈辱的な敗北を思い出したのか、怒りに顔を歪ませるナツ。
息巻いて体を起こすが、足首に走った激痛に耐えきれず蹲ってしまった。
見れば左の足首が見事に赤く腫れ上がっている。痛々しいその様にエルザは眉根を寄せた。

「強がりを言うな。立つ事も出来ない癖に」
「なっ、強がりじゃね……うぐっ!」
「分かったから暴れるな」

ナツの大きな瞳には大粒の涙すら浮かんでいた。それなのに未だ意地を張っている彼の頑固さも相当だ。
このままでは埒が明かないと判断し、エルザはナツに背中を向けて屈みこんだ。

「……何だよ?」
「ギルドまでおぶって行ってやる。さぁ、掴まれ」
「はぁ!?ふざけんなョ!女のお前におぶられるなんて、冗談じゃ……――!」
「私の言う事が聞けんのか!」
「う……は、い」

目をひん剥いて握り拳を掲げたエルザは、ナツの頑固な精神をいとも容易く叩き折った。










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