FAIRY TAIL | ナノ






それはいつも通りの事で、何もおかしい事は無い、日常の光景。
だからこそ誰も気に留めなかったし、止めようともしなかった。

「こら!逃げんなルーシィ!」
「逃げるに決まってんでしょー!?」

ルーシィを追うナツ。ナツから逃げるルーシィ。ギルド内でも取り分け仲の良い二人がじゃれ合っている(ルーシィ本人が聞けば断固として否定するだろうが)本当に何の変哲もない、ここでは良く見慣れた光景だ。
雄叫びを上げたナツが飛ぶと、ルーシィは悲鳴を上げつつそれを回避する。勢い余ったナツは進行方向にあったテーブルに派手に突っ込み、そして乱闘が始まる。
やはりこれもいつも通りの事である。だがその“いつも通り”の光景に一つ、“いつもと違う”光景が混じっていた。

ひゅーん。
机にぶつかった拍子にナツの手からすっぽ抜けたソレは、クルクルと弧を描いて宙を舞った。
落下目標地点はカウンター。正確にはそこに座り、背後の喧騒など気にも留めず酒を煽っていたラクサス。
ワックスで固められた金髪に見事にソレが命中、中身が盛大にぶちまけられる。熱気渦巻くギルドの空気が一瞬で冷却された。

「……あぁ?」

ぽたりぽたり、と粘っこい液体を頭一杯に被ったラクサスは、酷くゆっくりとした動作で振り返った。
鋭い視線が恐怖に凍りついたギルドの面々を見渡す。そして一際動揺している様子のナツに、留まった。

「ナツ……てめぇ」

頭についたガラスの破片を振り払う。それに伴うように微かな電流が走った。
ささやかな午後の時間を邪魔してくれた張本人に鉄拳制裁を下す為、一歩踏み出したその時だ。
覚えのない、奇妙な感覚がラクサスの全身を突き抜けた。



小さな小さな










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