FAIRY TAIL | ナノ






ピーンポーン。

「……あ?」

年明けの早朝。
鳴り響いた家のチャイムに安眠を貪っていたラクサスの意識が引き摺り出される。
ゴシゴシ、と起きたばかりで働かない目をこすっていると、もう一度チャイムが鳴る。

「誰だよ、こんな朝早くに」

昨日は遅くまでギルドで年越しパーティが行われていた。
一度破門される前まではそういったイベントに顔を見せる事が少なかったラクサスだが、今年は雷神衆に引っ張られる形でギルドに足を運び、他のメンバーと日が暮れるまで酒を飲み交わした。
少々羽目を外し過ぎたせいか、僅かではあるが頭痛がすら感じる。
睡眠不足にその痛みも手伝って不機嫌マックスなラクサスは、文句を垂れながらも玄関に足を運んだ。

「どちら様……だ、」
「おはよう、ラクサス」

開けた扉の前にはにっこり笑顔を浮かべた愛しい恋人が立っていた。
今一番会いたかった、けれど予想外な人物の訪問にラクサスは一瞬言葉を失う。

「おまっ……何で」
「上がっても良い?」
「聞けよ」

ミラジェーンは返事も待たずラクサスの横をするりと通り抜ける。

「朝ご飯作って来たの。食べるでしょ?」
「ご飯だぁ?」

見ればミラジェーンは両手に何やら大きな包みを抱えていた。
それを食卓の上に置き、早速広げようとする彼女の背中にラクサスが問いかける。

「オメー、今日は仕事って言ってたじゃねぇか」

年明け一日目の今日は、メンバー以外にも多くの一般人がギルドを訪れる。
接客の第一線に立っているこの看板娘にとっては、一年で指折りの忙しい日になる筈なのだが……。

「あぁ。ラクサスは帰っちゃったから知らないのね」
「あん?」
「貴方が帰った後にナツがグレイに喧嘩吹っ掛けてね、二人ともお酒入ってたからいつもよりヒートアップしちゃって、それで」
「……ぶっ壊しちまったのか」
「だから今日ギルドは使えないのよね」

クスクスと面白そうに笑うミラジェーンの額には、良く見れば絆創膏が一枚貼ってあった。
昨日会った時には無かった筈の物。紛れもなく普段以上に激しかったというナツとグレイの喧嘩によるものだ。

――あいつ等、人の女に傷付けやがって……!

後でシメよう、と無意識に電撃を纏うラクサス。
そんな彼の殺気に気付かないのか、ミラジェーンは呑気な口調のまま続けた。

「でもそのおかげで今日は一日ラクサスと一緒にいられるんだけど」
「………!」
「さ、ご飯食べましょう」

るんるんと鼻歌を歌いながら朝食の支度を始めるミラジェーン。
その背中を見つめながら、さっきの考えを改め、ギルドをぶっ壊した暴れん坊共にご褒美のお年玉でもくれてやろうかと思案するラクサスであった。





2013.1月拍手





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