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その日から俺は学校に行かなくなった。
代わりに【KEY-LL】という店で一日のほとんどを過ごすようになっていた。

「タク、昨日の分」

「ありがとう三臣」

この店はタク達のチーム『LEKEY』のたまり場で、といっても毎日いるのは俺とタクくらいであとはみんな好きな時に来ているだけでタクの言葉通り喧嘩さえ売られなければチームとしてはなんの動きもないおだやかな場所だ。

「北の方は大分やられたな…、これじゃぁ残ってるチームも時間の問題だ」

「大きいチームはやられてしまったようだ、小さい方は潰される前に解散するのが賢明だ」

「だな」

「チームの名前は『八重桜』、今のところチーム人数は両手で足りるくらいだ」

「こないだやられたチームは40人以上いたはずだ」

「あぁ…、だけども圧勝している」

「奴らは北方から東に向かってる、時期にここともぶつかるな」

このチームの人数が何人いるかは知らないがタクの話を聞いてる限りじゃ勝機があるようにも思えない。

「覚悟は決めてる」

「………」

「いいのか?三臣」

「いいんだ」

俺も、覚悟を決めてる。
意味もなく、学校にも行かずここに入り浸っているわけじゃない。
俺は、ここで…

「ところで最近松永はどうしてる?」

なんとなく気まずくなってしまった気がして俺は無理やり話題を変える。
学校にも行っていないからあれ以来会ってはいないけど、今となってはあの変人にちゃんとお礼を言いたかったと思っている。
過程はどうであれ結果として俺は俺と向き合うチャンスをつかんだのだから。

「アイツなら相変わらず、お前に会いたがってた。ここにはわけあって来れないから会いに行ってやれば喜ぶんじゃねぇ?」

「いや…」

「アイツの事嫌い?」

「そうじゃないけど、なんていうか全部が終わるまでは会いたくないな。全部が終わったらお礼をしにいくよ」

「………そっか」

静かに、ただ静かに。
頷くタクの顔はまるでそれが叶わない事を知っていたかのように寂しげに微笑んだだけだった。

「三臣、お前は絶対にお前の一番を間違えるなよ」

「タク?」

「俺の一番はこのチームなんだ」

タクは誰もいないフロアを見渡して何かに思いを馳せていた。
そういえばタクはこのチームの頭ではないし、頭のことは教えてもらっていない。
その事と関係があるのかどうかは知らないが今のタクには聞けない雰囲気が漂っていた。

「タク、俺の一番は…」

「聞きたくない」

「…………」

「言葉はいらない、態度でみせてくれ」

「ああ」

「三臣、この世界じゃ戦う相手が敵なんじゃない、仲間だからこそ敵に回ることもあれば敵だからこそ共に戦うこともある」

タクの目はこのフロアを通り過ぎもっと遠いところを見ている。
俺にはまだわからない、ずっと先。

「戦い抜いた先に掴めるのは一つだけなんだ」

お前は掴み損ねるな。
そういって俺の肩を叩いたタクは瞳に強い意志をやどしていた。

チームなんてただの非行と大人たちは思うだろうか?
危険を求める若さゆえの過ちと、バカな行為だと。
俺も今までならそう思っていたかもしれない。

だけどもタクを見ているとそんな薄っぺらい世界じゃないんだって思うようになった。
命より大事なものを賭けて戦っているんだ。

だから、

俺も命より大事なものをかけて戦おう。





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