俺が松永の親戚の松永?に会いに行ったのはその日の放課後。
ホームルームが早めに終わったおかげで俺が4組についた時には生徒の大半がまだ教室に残っていたのだ。
松永いわく不良の松永はクラスにはおらず、クラスメイトに聞いたところ渡り廊下に居るとの事だったので俺は今その渡り廊下にいる。

「すまない、松永って…」

「………あぁ。あんたが真添?俺が松永、アイツから話は聞いてる」

松永とは全然似てないんだな。
黒の短髪にがっしりした体躯、制服さえ着崩していなければ部活生と言われても違和感がない、というか外見だけでいくならうちのクラスの松永の方がどう見たって不良だ。
なんてどうでもいいことを考えつつ俺は松永を真っ直ぐ見る。

「松永からチームに入ってるって聞いてきたんだ、最近うちの学校の田村元がチームに入ってるって噂が流れててその事でなにか知らないか?幼馴染なんだ」

「あぁ、ね」

「すまない、本人に聞けば手っ取り早いんだろうが最近はなかなか連絡がつかなくて。知っていたらでいいんだが…」

松永は何かを考えるように目を閉じると、小さな息とともに少しずつ言葉を吐き出した。

「真添にはわかんないだろうけどチームっつってもたくさんある。喧嘩が売り、走りが売り、情報が売り、ちょっとヤバい系になるならヤクザと繋がりを持って薬の売買に一枚噛んで金銭を目的とするチームもある」

「薬物…?そんなこともするのか?」

「まさか、俺達んとこは何が売りってわけでもねぇ、ただ単にはみ出した野郎どもが集まってるだけさ。そりゃぁ喧嘩売られたら買わなきゃならねぇ、チームと名乗るからには絶対だ」

「そういうもんなのか?」

「そういもん」

理解はできないがチームの常識なんてもん俺には関係がないので頷いて適当に続きを促した。

「結果から言うと、田村元は夜の世界にいる」

「――――――‥っ」

「最近できた少人数のチームで売りもんは喧嘩=v

「喧嘩…?ま、まさか!!元はそんな喧嘩だなんて、ましてや理由もなく人を殴れるような人間じゃない!!」

「じゃぁ、あんじゃねぇの?理由。」

「…………」

「そこら辺は俺は知んねぇけど。すごい勢い他のチームを潰して回ってるらしいぜ?」

「元が、喧嘩を?」

「してるみたいだぜ?現に知り合いのチームはそこに潰された。俺らのとこも時間の問題だろう」

元が喧嘩を?
しかも自ら喧嘩を売って回ってるというのか?
まさか…そんな…

でも

それが本当なら、何のため?

「俺が知ってるのはそんくらい。チームだって新しいからそんなに情報も出回ってないし、田村元にいたってはお前の方が良く知ってるんじゃねぇの?」

「………」

「てなわけでこれでお喋り終了、んで、俺は知ってることを喋ってやったわけだからそれなりの見返りが欲しいんだけど?」

「……ぇ?」

「善意で教えたわけじゃねぇの、交換条件で俺の頼みもきいてもらおうかな?」

後から言うなんて卑怯じゃないか?
なんて言えるはずもない満面の笑みに俺はただ頷くしかなかった。

「どうせ条件だされるならもう一つだけいいか?」

「言ってみな」

「―――      。」

「真添、お前…」

松永は俺の言葉に少し驚いたが少し寂しげに微笑んだだけだった。

「タク、だ。松永タク。」

差し出された手を握り返すと俺はその場を後にした。
様々な思いとともに。






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