それから数日たっても、松永は俺に絡んできた。
疑問形の好きだよと、よくわからん柔らかな笑み。
心動かされたかと聞かれれば答えはNOだ。
むしろ苛々はつのるばかりだ。
俺が死ぬまで隠していたい同性愛の言葉でさえ、松永は平気で口にできるのだ。
そんな言葉は欲しくない。
俺が元に言ってやりたい。
だけど俺のイライラはそれだけじゃない。
『元がチームに入ってる』
そんな噂がちらほらと学年を回ってるみたいで、しかもタイミング悪く、元とは連絡がつかなくなった。
「それってやっぱ噂が当たってたりしてー」
「黙れ」
後ろの席から茶々を入れる松永にうんざりしながら…と言うかなんで俺が考えてる事がわかる?
「可愛そうな真添ー、俺が体で慰めてやろうか?」
「気色の悪い冗談だ」
「そう?俺、結構脱ぐとすごいんだぜ?」
「知りたくなかったな」
「なんなら見てみる?」
「遠慮する」
元…。
学校には来てるし、家にも帰ってはいるらしい。
心配するほどの事じゃないんだって頭ではわかってる。
今までが異常だったんだ。
普通では考えられないほど近くにいたんだ。
「俺に惚れときゃ楽だろうにねぇ」
「………」
「ま、いいか」
何が楽しくて俺なんかをからかうんだかな。
松永はまた柔らかく微笑んで机の上に突っ伏した。
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