小さな決まりは数多けれど、北区の人間が守らなければならないのはただ一つ。

【走る誇り】

それだけだ。

喧嘩をしちゃいけない、とか、そーゆー事じゃないんだ。
走り以外で争うのはダメ。
優劣をつけるのは走りだけで、優劣がつくのも走りだけ。

他人の誇りを汚すことなく自分の誇りを貫くための世界が北区なんだ。

だから、それに反すれば罰を受けなきゃいけない。

「久しぶりだねぇ」

「そうだのぅ、儂(ワシ)らは滅多に外に出ぬからな」

下の人間達なら俺が罰を与えればいいけど、
もし、俺が決まりを破ってしまったら北区の人間には誰も俺を罰せやしない。

「ねぇ、ワン、あんまり痛いのはやだよ」

「儂に言われてもわからぬよ、こればっかりはな」

「だよねー」

だから、いるんだ。
コイツラが。

「あの程度なら、主人も寛大な処置をして下さる」

俺に罰を与える人間。
目の前にいるワンの主人がそうだ。
そう、不思議だと思っただろう?

だって俺が今話しているのは本当にただのドーベルマンだしね。
犬だよ?犬。
でも当たり前の事だけど犬はしゃべらない。



prev next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -