サイアク、だ。

「三臣の前にいた奴はわざと転んだんだ?」

「…………」

「何言って…」

「足止めの為に?我が身構わず、健気だねぇ」

手が震える。
走りにプライドをかける人間がすることか?
これが、北区の人間のプライドか?

俺の地区で、走りを汚すんじゃない!

「………ッグ!?」

「ちょ、何するんすか!?喧嘩はご法度じゃ…!」

気付けば殴りつけていたけれど、気付いてもやめる気はなかった。

「知らないの?北区のルールは俺なんだよ?」

「待っ…!!」

「俺の地区で走りを汚して、まさかまだ走れるとでも思ってるの?」

喧嘩も出来ない、走るしか脳がない人間のくせに!
その走りさえもオマエラは汚したんだ!!
しかも、三臣を……!!

サイアクだ!

「…ッッああ゛っ」

気を失った男達を見下ろして、俺は息をついた。

やっぱり、俺には喧嘩は向かないや。
こんなにも虚しいから。

踵を返した俺の後から、いきなりソイツは現れた。

やっぱり、見つかった。

「玄武、ルール違反じゃ」

「………久しぶりだね、元気にしてた?」

「玄武」

「わかってるよ」

「自ら強いた規律を破るとは、馬鹿よのぅ?最初からそんな物決めねばよかったろうに」

「………行こう」

ルールを破れば、
必ず罰がくだる。

それが、例え玄武でも…



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