いくつものバイクが走っているはずなのに、俺の視界には元様以外は映らない。

それが、いけなかった。

元様が一瞬こちらを振り返った、が、理解した時には遅かった。

斜め前のバイクがカーブを曲がりきれずに転倒。
そのままの勢いでバイクが俺の前に滑り出て…!

「……ックソ!」

ギリギリ、避けれはしたが濡れた路面に大きくスリップしたタイヤが悲鳴を上げていた。
バイクの損傷は多分ナイ、が……っ。

そんな俺を横目に後続がどんどんと走り去ってしまう。

「…………」

コースアウト。
最悪だ。
大幅なタイムロス。

素早くバイクを動かしたが2位は正直厳しいだろう。
焦るばかりの心がさらに走りの邪魔をする。
粗くなる運転に、余裕のない自分。
最悪だ。
こんな『走り』が玄武の片腕なんて、元様になんて詫びればいい…?

離れていた距離を詰め、
一人、また一人、抜いていくのにもう元様は見えなかった。

「元様っ…!!」

きっともうゴールへ向かっている。
お願いだからゴールしたら帰って下さい…!
こんな、惨めな姿…

見られたくない。



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