抱きたい。
抱けない。

愛しすぎて、
もはや狂喜じみたこの感情を、貴方はどこまで許してくれますか?

どこまで受け入れてくれますか?

「御武運を」

「あぁ、行こう三臣」

無理矢理押さえ付けて泣かせて後悔させたい。
こんな男を愛した事を。
それから、
逃げれない事を理解して絶望してほしい。

そうすれば諦めて下さいますよね?

俺に愛される事を…。

辺りに響き渡ったクラクションの合図に俺は意識を切り替える。
走る事以外は、今は、考えてはいけない。

はずなのに。

一瞬視界に映った愛しい姿に俺はスタートが遅れてしまう。
本当に、何してる…!

一気に速度を上げてぐんぐん前へと進んで行くのに、元様はぐんぐんと離れていく。
風を切る、そんな走り方じゃない。
元様のはまるで一陣の風のようだ。

走ってるだけでギャラリーを魅了する。

伸びやかな軌道を描き、闇を撫で、テールランプの余韻を残し
音だけが後から胸を刺す、そんな走り方をするんだ。

北区の人間を魅了する北区のトップ。
初代にして末代の『玄武』、負ける事の許されない、俺の恋人。

尊敬してるんです。

だから、俺は…



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