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辺りを闇が覆えば、轟くのは数多のエンジン音だけだった。
心臓をも奮わせるその音に、俺は目眩にも似た昂揚を覚える。

元様はバイクに寄り掛かり闇夜に消えた遥か遠くを眺めているようだ。
慌ただしく動くチームの人間達も、唸るバイクの群れも、存在しないかのようにずっと遠くを見つめる。

その視線の先には何がありますか?
今、何を考えているのですか?

視界どころか、その心にさえ俺は存在しないんじゃないだろうか。
なんて、馬鹿げた事だ。

ため息を一つついて俺は元様を見た。

「元様」

「………、ああ」

俺の視線に促されるように彼は前へと歩きだした。

「行くよ、三臣」

「はい」

「ちゃんと、ついて来て」

「はっ!」

最愛のヒト。

でも今は『玄武』とその『片腕』にすぎない。
ならば片腕として、
貴方の後ろは必ずや死守致します。



でも、本当は…
わかっているんです。
恋人になってしまえば片腕にはなれず、
片腕に徹すれば恋人にはなれず、
どちらとも得ようとすれば貴方を傷付ける。

抱いてしまいたい。
今すぐ、この場で押し倒して全員の前で無理矢理にでも犯したい。
なのに、
俺は片腕としても貴方に必要とされたいんです。

どっちかだけなんて無理だ。



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